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2023年頭所感…「農業・林業+ソーラー発電」で解決

人類史的な転換点と日本人の課題(2)資源自給国家への具体策

小宮山宏
東京大学第28代総長
情報・テキスト
日本が「資源自給国家」になるのは、歴史の必然である。人類文明は、鉄や銅の鉱山から都市鉱山へ、化石資源から再生可能エネルギーへと転換する局面を迎えているからだ。忘れてならないのは、原子力発電は過渡期における存在に過ぎないことである。長期的な視野をもって、エネルギー問題に取り組むべきだが、実は日本は、今すぐにも再生可能エネルギー大国になりうるのである。(全2話中第1話)
時間:08:42
収録日:2022/12/08
追加日:2023/01/01
キーワード:
≪全文≫

●日本が「資源自給国家」になる必然


 今日は、日本が「資源自給国家」になるということで、その要ともなる日本の再生可能エネルギービジョンとそこに向けた話を申し上げたいと思います。

 資源自給国家というのは決して突拍子もない話ではなく、むしろ必然的な方向性です。21世紀、鉱山(鉄鉱山や銅の鉱山など)が都市鉱山に取って代わられます。それから、化石資源が再生可能エネルギーに代わります。また、バイオマスという植物由来資源の重要性が増します。こうした根本的な人類の文明の変化に応じて、日本が資源自給国家になるということですから、これは必然であるわけです。

 エネルギー問題を取り上げますと、2022年、特に政府が原子力政策に対して非常に大きな変化を打ち出しました。しかし、第一に重要な点はエネルギーの量としての問題であり、原子力はそれほど大きな量ではありません。

 人類のエネルギー量を見ると、20世紀は圧倒的に化石資源の世紀です。原子力は、一番多かったときで世界のエネルギーの約6パーセントを占めました。今は4パーセント少々になっています。要するに、20世紀の後半から21世紀にかけての過渡期的なエネルギーといえます。

 それからもう一つ。2022年11月に配信された鈴木達治郎先生(長崎大学核兵器廃絶研究センター〈RECNA〉センター長・教授)のテンミニッツTVでのお話をお聴きになった方も多いと思いますが、「原発には核兵器の1000倍から1万倍という信じられないほどの量の放射性物質が内蔵されている」ということでした。

 ウクライナの問題でも原発が非常に心配されましたが、そこが戦争やテロの標的になるというリスクをはらんでいるわけです。


●太陽光発電は家の屋根と畑で


 今しばらくは変化していく時であり、いきなり化石資源から再生可能エネルギーに転換するわけにはいかないので、その過渡期を補うエネルギーとしての原子力を否定するつもりは私にはありません。しかし、長期的には再生可能エネルギーになるのであり、そのための過渡期なのだということはよく考えないといけません。

 今の日本で私が憂慮するのは、過渡期である原子力の議論が、再生可能エネルギーをすさまじく加速しなくてはいけないときに足を引っ張っていることです。私が非常に憂慮するのはこの点で、では、本当に再生可能エネルギーで人類はやっていけるのか。あるいは、それで日本のような国はやっていけるのか。そういうことが、十分に議論されていないではありませんか。私たちは、この議論を行いました。その結論は、再生可能エネルギーだけで十分エネルギーをまかなうことができるのです。

 また、変動の問題がございます。(再生可能エネルギーの)主力である太陽光や風力というのは、変動の激しいエネルギーです。これはその通りですが、克服する技術がすでにあります。ここが重要な点であり、ここを少しご説明したいと思います。

 まず、太陽光について申し上げますと、この装置を置くのは屋根と畑が中心です。現在の発電総量と同じ、具体的には1000テラワットアワーの量が、屋根と畑だけで発電できます。

 畑のほうは「ソーラーシェアリング」と呼ばれるもので、高さ3メートルぐらいの架台を畑に立てます。その上に、間をおいて長方形の太陽電柱を、畑の上に30パーセントぐらいの面積になるように立てます。なぜ3メートルかというと、機械が入れるように、ということです。3割はどういうことかというと、3割まではその下で育つジャガイモや玉ねぎなどの生育を全く阻害しないからです。つまり影響がないわけです。


●土地の収益性をすさまじく上げるソーラー発電


 最近では、田んぼでも大丈夫だということが実験により明確になってきています。これはベンチャーや大企業が進めていますが、田んぼの上に畑と同様30パーセントぐらいまで、同じようなものを置いても、稲の生育にはほとんど影響を及ぼしません。

 ここで面白いのは、30パーセントの発電と下に生えるお米を金額に換算すると、お米1に対して電気の売電収入が4というのが、平均的な値になることです。

 これは林業でも同じようなことがいえます。森林は日本の大変な資源ですが、伐るのに対して植えていくという循環が不可欠です。そこで、樹木を伐ったときに、例えば3パーセントの面積にソーラーを置き、97パーセントを再造林する。そうすると、3パーセントによって林業より大きな収入を得ることができます。

 なぜ、こんなことが起こるかというと、土地の面積あたりの生産性です。林業を1とすると、だいたい1ヘクタール10万円ぐらいが基準になります。同じ面積でお米をつくると、1ヘクタール100万円です。ところが、ソーラーを置くと、1ヘクタールで約2000万円ですから、ざっと考えて「1:10:100」ぐらいの大きな生...
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