エネルギー問題と世界の潮流を読む
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
エネルギー問題の解決策…再生可能エネルギーの「大変化」
エネルギー問題と世界の潮流を読む(1)加速する再生可能エネルギー化
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
エネルギー問題は20世紀後半以降の世界を騒がせてきたが、いつまでもオイルショック時代の認識は通用しない。環境への意識が世界的に高まる中、再生可能エネルギー技術は長足の進歩を遂げ、すでにコストでは化石資源を逆転している。石炭に続き、石油や天然ガスが「座礁資産」となる日は近いのである。(全2話中第1話)
時間:9分23秒
収録日:2021年7月30日
追加日:2021年9月21日
≪全文≫

●「エネルギー資源」とは何か


 今日はエネルギー問題について、基本的なことをお話ししたいと思います。

 最初に、「エネルギー資源」とは何か。これは一番基本ですが、とても重要です。

 例えば電気や水素というのは「二次エネルギー」といって、エネルギー資源ではありません。エネルギー資源というのは、そのあたりに転がっていたり、地下から掘ることができたり、あるいは空から降ってきたりして、われわれが手に入れることができるものです。さらに、われわれがそれを電気や灯油、ガソリンなど、人間の使いやすいエネルギーに変えることができるものを、「エネルギー資源」といいます。

 こういったエネルギー資源の一つは化石資源です。地下にある昔の動植物の死骸等は、具体的には石炭、石油、天然ガスです。これらは掘り出して燃やせば熱になったり、少しきれいにすれば灯油になったりするわけです。これはエネルギー資源です。

 もう一つは原子力です。現在はウランが使われますが、土の中にある鉱石を掘ってきて、上手に変換させれば熱が出てくるということで、これもエネルギー資源です。

 もう一つは自然にあるエネルギー。「再生可能エネルギー」といわれているもので、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱。その他に潮の満ち引き(潮汐)などもエネルギー資源にはなるのですが、エネルギーの量として重要な自然エネルギーは先の五つになります。

 これらの化石資源、原子力、再生可能エネルギーというエネルギー資源と、二次エネルギーとして変換したものである電気や水素、灯油などは、明確に分けて考えないといけません。人間が必要とするのは、エネルギー資源なのです。


●量もコストの安さも群を抜く再生可能エネルギー


 それでは今、世界はどんなエネルギー資源に向かっているのでしょうか。一言でいうと、急速に再生可能エネルギーのほうに向かっています。なぜかということですが、下の表を見ていただきたいと思います。

 これは、今申し上げた三つのエネルギー資源から電気をつくりだすときに、何を使うとどれくらいコストがかかるかを示す図です。2009年から2020年まで、そのときに新しい発電所をつくったら、そこから出てくる電気はいったいいくらになったかを示しています。

 10年...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新