●「エネルギー資源」とは何か
今日はエネルギー問題について、基本的なことをお話ししたいと思います。
最初に、「エネルギー資源」とは何か。これは一番基本ですが、とても重要です。
例えば電気や水素というのは「二次エネルギー」といって、エネルギー資源ではありません。エネルギー資源というのは、そのあたりに転がっていたり、地下から掘ることができたり、あるいは空から降ってきたりして、われわれが手に入れることができるものです。さらに、われわれがそれを電気や灯油、ガソリンなど、人間の使いやすいエネルギーに変えることができるものを、「エネルギー資源」といいます。
こういったエネルギー資源の一つは化石資源です。地下にある昔の動植物の死骸等は、具体的には石炭、石油、天然ガスです。これらは掘り出して燃やせば熱になったり、少しきれいにすれば灯油になったりするわけです。これはエネルギー資源です。
もう一つは原子力です。現在はウランが使われますが、土の中にある鉱石を掘ってきて、上手に変換させれば熱が出てくるということで、これもエネルギー資源です。
もう一つは自然にあるエネルギー。「再生可能エネルギー」といわれているもので、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱。その他に潮の満ち引き(潮汐)などもエネルギー資源にはなるのですが、エネルギーの量として重要な自然エネルギーは先の五つになります。
これらの化石資源、原子力、再生可能エネルギーというエネルギー資源と、二次エネルギーとして変換したものである電気や水素、灯油などは、明確に分けて考えないといけません。人間が必要とするのは、エネルギー資源なのです。
●量もコストの安さも群を抜く再生可能エネルギー
それでは今、世界はどんなエネルギー資源に向かっているのでしょうか。一言でいうと、急速に再生可能エネルギーのほうに向かっています。なぜかということですが、下の表を見ていただきたいと思います。
これは、今申し上げた三つのエネルギー資源から電気をつくりだすときに、何を使うとどれくらいコストがかかるかを示す図です。2009年から2020年まで、そのときに新しい発電所をつくったら、そこから出てくる電気はいったいいくらになったかを示しています。
10年ほど前、一番高いのが青色の太陽光発電所でした。その次に高いのが緑色の風力発電で、両方とも自然エネルギーといっていたものを電気に変換するわけです。次の赤色が原子力で、ウランから電気をつくるコストです。その下の一番安い二つが「化石資源」と呼ばれるもので、石炭と天然ガスを使った発電です。これが10年ほど前、2010年頃の状況だったのです。
そこから技術開発が急激に進んだのが、それまであまり使われていなかった再生可能エネルギーです。一番価格が下がったのは太陽光発電、次に風力発電で、これも技術が進んだ結果、うんと安くなってきています。その結果、2020年時点で見ると、再生可能エネルギーが一番安いエネルギーになりました。ただし、これは世界平均です。
一方、今一番高いのは原子力です。新しい原子力発電所をつくると、そこから出てくる電気のコストは再生可能エネルギー(太陽光・風力)の4倍ぐらいになります。化石資源(石炭、天然ガス)を燃やして、そこから電気を得ることはできますが、それよりもさらに再生可能エネルギーが安くなっているのです。
現在どういう状況が起きているかというと、2019~20年あたりに世界で新しい発電所がたくさんできているうち、約7割が再生可能エネルギーの発電所になっています。それは安いからです。
●温暖化とエネルギー問題の出口
もう一つのエネルギーの潮流に関することでは、いわゆる温暖化の問題があります。化石資源は、燃やすとCO2が出てきます。現在、人間が関与しているCO2の9割以上は化石資源を燃やすことによって出ているものです。他には、セメントをつくるときにCO2が出てきます。この量がかなり多いのですが、ほとんどは化石資源です。
このため化石資源を使わないようにしようという動きが出ていて、その一番が石炭です。化石資源には石炭・石油・天然ガスの3種類があるのですが、同じ量のエネルギーを取ったときに出る炭素の量が違います。石炭を1とすると、石油はその約8割、天然ガスはその約6割です。ですから、石炭が今一番悪い(炭素の量が多い)と言われていて、石炭火力発電所などがどんどん閉鎖されていっているのが世界の潮流です。
天然ガスの場合、石炭を天然ガスに換えると、同じ電気を取るのにCO2の発生が半分ぐらいに減ります。ですから、今のところはいいものとして言われていますが、遠からず(2050年までには...