●「前途多難社会」に向かっている世界
ここでは世界的に見たときに、このGDP比で見て、持続可能な社会のほうが前途多難社会に比べて、緩和費用も影響もグッと少なくて済むといったときに、皆さん、具体的に持続可能社会とか、(あるいは)前途多難社会というのは何を考えているのか、ということが気になると思います。(このスライドは、)国際的にナラティブという物語がそれぞれの社会経済シナリオに対して共有されていて、それにどう書いてあるか、ピックアップしたところなのです。
まず、前途多難社会(SSP3)という、持続可能ではない未来は、ナショナリズムが再燃し、国際協調が弱く、地球規模課題への調整能力が不足しています。各国政府は自分たちのことしか考えなくて、下手するとエネルギーとか農業には貿易障壁も付ける。教育と技術開発の投資が少ないので、逆に技術的な伸びが悪い。なので、あのように(前回お伝えしたような)コストもかかったりして、影響も大きくなるわけです。経済は発展しません。
それに対して、持続可能な未来では、マルチステークホルダーの協調によってグローバルコモンズ、(つまり)大気も含めて環境の管理も改善する。それから、資源やエネルギー強度、GDPあたりに必要な物質の量とかエネルギーの量は減っていく。教育と健康への投資、このあたりは両方あいまっているわけです。そして人口も増えない。経済成長重視から人間の幸福を重視する方句にシフトする。格差は減る。
見ていただいて、今、どちらかというと世界はものすごくこちらの方向(前途多難社会:持続可能ではない未来)に行っているわけです。なので、ますますコストは高いし、温暖化のなかなか投資も進まないということかなと思います。
―― どうでもいい質問なのですが、非常に印象深い絵が2枚並んでいます。ジン通りとビール街というのはどういう寓意なのでしょうか。
沖 これは有名なフォガースの18世紀の銅版画なのですけれど、ジン通り(の絵のほう)は――今ジンとビール、同じメーカーが売っていたりしますけれど――ジンは蒸留酒で悪酔いして、お母さんが赤ちゃんを放っておいて酔っ払って、(近くに)首吊っているおじさんがいてとか、非常に悪いところのシンボルです。
ビール街(の絵のほう)は、ビ...