●中国が目指すのはイノベーション強国か
ここで、先端技術をめぐる米中競争について少し詳しく述べてみましょう。
ペンス演説の約1年前の2017年10月、中国共産党全国代表大会において習近平氏が「近時代の中国の特色ある社会主義」と題する演説を行いました。
その中で中国は、今世紀中葉までの第1ステップとして、2020年から2035年までに「社会主義の現代化を基本的に実現する(社会主義現代化強国)」としています。第2ステップは2035年以降今世紀中葉の2049年ごろを目標とし、「豊かで強く、民主的で、文明的で、調和が取れ、美しい社会主義現代化強国」を建設することとしました。
第1ステップ完了までに達成すべき目標の中でも、第1番目に「中国の経済力及び技術力を急速に発展させ、世界におけるイノベーションのリーダーになる」ことが挙げられています。つまり、中国は第2ステップの目標となる経済的、軍事的、政治的、文化的な強国になるための基礎として、イノベーションが極めて重要であると認識しているわけです。
これらの目標設定に続いては、経済政策及び安全保障政策の項においても、イノベーションの重要性が謳われています。例えば経済政策においては、インターネット、ビッグデータ、および人工知能(AI)の融合が、先進製造業には不可欠であるという認識を示すとともに、イノベーティブな開発がヒューマンキャピタルサービスの発展等を通じて、中国の世界的なバリューチェーンの中流から上流を目指すとともに、世界一流の先進製造業集団を育成するとしています。
さらには安全保障政策においても、今世紀中葉までに「世界一流の軍隊を建設する」ことを目標とした上で、「我々は技術が重要な戦闘能力であることを強く認識し、主要技術の分野において独自のイノベーションを推進しなければならない」として、軍事強国の観点からもイノベーションの重要性を強調したのです。
●「国益に真っ向から対抗する」中国という米国の認識
一方、米国は2017年12月発表の「米国国家安全保障戦略」において、「技術や情報が大国間の戦略的競争における主戦場である」という認識を示しました。まず、序章においては「情報(data)をめぐる争いは、政治経済、軍事面における競争を激化させている」との情勢認識を表した上で、以下としています。
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