米国の対中政策~戦略の現状と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
米中間で技術的優劣をめぐる戦いが先鋭化している
米国の対中政策~戦略の現状と課題(4)先端技術をめぐる米中競争
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
エスカレートする米中の対立はその舞台を「最先端技術」、すなわちイノベーション競争に置いている。アメリカはいまだ自国を「主力(Leading Player)」と考え、中国を「挑戦者(Challenging Player)」もしくは「追随する競合(Pacing Competitor)」として自国の国益を害する存在と認識している。一方で、中国はすでに「新時代」を確信しており、中長期ロードマップを描いている。(全8話中第4話)
時間:8分28秒
収録日:2020年10月7日
追加日:2020年10月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●中国が目指すのはイノベーション強国か


 ここで、先端技術をめぐる米中競争について少し詳しく述べてみましょう。

 ペンス演説の約1年前の2017年10月、中国共産党全国代表大会において習近平氏が「近時代の中国の特色ある社会主義」と題する演説を行いました。

 その中で中国は、今世紀中葉までの第1ステップとして、2020年から2035年までに「社会主義の現代化を基本的に実現する(社会主義現代化強国)」としています。第2ステップは2035年以降今世紀中葉の2049年ごろを目標とし、「豊かで強く、民主的で、文明的で、調和が取れ、美しい社会主義現代化強国」を建設することとしました。

 第1ステップ完了までに達成すべき目標の中でも、第1番目に「中国の経済力及び技術力を急速に発展させ、世界におけるイノベーションのリーダーになる」ことが挙げられています。つまり、中国は第2ステップの目標となる経済的、軍事的、政治的、文化的な強国になるための基礎として、イノベーションが極めて重要であると認識しているわけです。

 これらの目標設定に続いては、経済政策及び安全保障政策の項においても、イノベーションの重要性が謳われています。例えば経済政策においては、インターネット、ビッグデータ、および人工知能(AI)の融合が、先進製造業には不可欠であるという認識を示すとともに、イノベーティブな開発がヒューマンキャピタルサービスの発展等を通じて、中国の世界的なバリューチェーンの中流から上流を目指すとともに、世界一流の先進製造業集団を育成するとしています。

 さらには安全保障政策においても、今世紀中葉までに「世界一流の軍隊を建設する」ことを目標とした上で、「我々は技術が重要な戦闘能力であることを強く認識し、主要技術の分野において独自のイノベーションを推進しなければならない」として、軍事強国の観点からもイノベーションの重要性を強調したのです。


●「国益に真っ向から対抗する」中国という米国の認識


 一方、米国は2017年12月発表の「米国国家安全保障戦略」において、「技術や情報が大国間の戦略的競争における主戦場である」という認識を示しました。まず、序章においては「情報(data)をめぐる争いは、政治経済、軍事面における競争を激化させている」との情勢認識を表した上で、以下としています。

1. ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ