●「宥和」か「体制変更」か、考えられる両極端の路線
前回お話した情勢から現在はどのように変化したかをお話しする前に、一つここで視点を変えてみましょう。
この資料は、CSIS(米戦略国際問題研究所)の優秀な研究者が書いた「After the Responsible Stakeholder, What?(責任あるステークホルダーの後に来るものは何か?)」と題する図表です。
アメリカが20年間取ってきた路線、要するに中国がアメリカのつくった国際秩序の中でいいほうに変わってくれる可能性については、もはや「ない」と申し上げました。では、その後としてどんな方法があるのかということです。どちらに行くかというよりは、いろいろな人に話を聞き、いろいろな文献に当たると、可能性としてこのような範囲に収まるだろうということで、その枠としては上から「想定(前提)」「勝利の法則」「核心的要素」と分けました。
まず、「宥和(Accommodation)」というアプローチの仕方があります。その前提に「中国は理性的でリスク回避的」とあるので、アメリカと戦うようなリスクは負いたがらない。そして、米国の優位は劣化傾向にあります。しかし、協力の連鎖は可能ですから、中国が強大化する前に取引するのが「勝利の法則」になります。そのとき、最も問題となるのは「二国間関係の質」である、というのが左端の「宥和」のアプローチです。
これとまったく逆なのが、右端の「体制変更(Regime Change)」です。ここではもはや、中国は現状変更的でリスク受容的なので戦争を辞さないと見ます。さらに、米国の優位性はどんどん無駄にされていく。そうはいっても、さすがに核戦争まではないが、それでも共産党は排除可能ではないかという前提に立っています。
そうであるならば、手遅れになる前に共産党を打倒するようにして、レジームチェンジに向かう。ただし、これは中国共産党による権力の掌握度にかかっています。最近のトランプ政権の各閣僚の演説などを見ると、習近平体制や中国共産党一党独裁に対する姿勢は、どちらかといえばこの方向へ傾斜しかけているのではないかと感じます。ポンペイオ国務長官なども、2020年7月の演説では習近平氏を名指しで「全体主義の信奉者だ」と批判しています。
●現実的には「集団的対抗」か「包括的圧力」か、ハイブリッドな組み合わせも
あと...