米国の対中政策~戦略の現状と課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
国防省主導での連続性・一貫性がトランプ政権の防衛戦略の特徴
米国の対中政策~戦略の現状と課題(3)トランプ政権の安全保障政策の要点
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
オバマ政権からトランプ政権への移行期、米国防省が公表した世界地図において、ロシアは「リライジングパワー」、中国は「ライジングパワー」と名指しされ、それぞれ中、長期的に解決すべき課題とされている。国防省とトランプ氏は同じ世界観を共有しているのだろうか。それとも現政権の安全保障戦略は国防省主導によるものか。(全8話中第3話)
時間:11分44秒
収録日:2020年10月7日
追加日:2020年10月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●2017年に米国防省が予測した「安全保障上の課題」


 スクリーンは、オバマ政権第2期目の2016年2月、ト国防省が公表した世界地図です。2016年の大統領選が終わった翌年である2017年に新政権になることを見込んだ上で「米国の直面する安全保障上の課題」という文書から作成した脅威認識です。一つずつ説明させていただきます。

 まず、ロシアについては「リライジングパワー」と名付けています。冷戦の終結とともにかなり(国力の)落ちていたロシアが非常に復活してきた。ただし脅威の正面は欧州ということで、熊の顔は欧州を向いています。

 もう一つ、急速に伸びてきた「ライジングパワー」が中国です。この龍の脅威は、正面のアジア太平洋に向いて炎を吹いているのかもしれません。ただ、この時点では、まだ尻尾がヨーロッパには届いていないといった認識です。

 また、この文書の中では、ロシアと中国を指して「大国間競争の再来」と言っています。今、トランプ政権で言っている"great power competition"というのは、実はこの時に初めて使われた言葉なのです。

 北朝鮮やイランについては、それぞれ「特定の地域における長年の課題」と言っています。北朝鮮の場合は朝鮮半島と日本を含む東アジア、イランは中東だろうと思いますが、そうした「地域」でずっと棘が刺さったように脅威となっているというニュアンスです。

 さらに当時は、いわゆるISILに代表されるテロリストのような非常に強大な敵と戦っていました。これらは「戦闘中かつ打倒すべき」と名指されています。

 ざっと以上のことを、米国が2017年に直面するであろう安全保障上の課題として予測していたわけです。


●現在の安全保障戦略に連続性・迅速性・一貫性がある理由


 この時点での予測は、2017年に発足する新政権への引き継ぎと言っていいものかもしれません。これが公表された2016年2月の時点では、当然のことですが、ほとんどの人がトランプ大統領の誕生を予測してはいませんでした。もしも民主党政権であれば民主党政権のヒラリー・クリントン氏に大統領の座が移るであろう、といった政権交代をにらみながらのことだったわけです。

 皆さまご承知の通り、米国では大統領が代わると「ポリティカルアポインティー」と呼ばれる高級なスタッフが全て交代するのが原則です。こうなると...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦