海底の仕組みと地球のメカニズム
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルチビーム測深機によって飛躍した海底探査の精度
海底の仕組みと地球のメカニズム(6)マルチビーム測深機と自律型ロボット
沖野郷子(東京大学大気海洋研究所教授/理学博士)
衛星高度計では分解能はそれほど高くないため、船で調査する必要がある。その場合、船から音波を出して測るのだが、現在は「マルチビーム測深機」で水深の3~4倍の幅で一度に測ることができる。ただ、どういう溶岩が流れているかなど詳細までは分からないため、自律型ロボットの測深機を海中に入れて測る。そうすると、非常に細かいデータが収集できるという。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分54秒
収録日:2020年10月22日
追加日:2021年6月6日
≪全文≫

●マルチビーム測深機を使った音波による水深測定


沖野 でも、こうした衛星のオープンなデータを使えるようになったのは1990年代の終わりぐらいからです。

―― 結構新しいですね。

沖野 はい。私がこの世界に入った頃にはなかったですね。だから船に揺られて、延々調査するしかなかったのです。衛星のオープンなデータが出てきた時は、「これは船酔いせずに研究ができる」と思いました。ただ、これ(衛星高度計)で調査すると分解能はどうしても(精度を欠きます)。地球上くまなく測れるのはすごいメリットですが、現在の地球で分解能は約2キロメートル(2,000メートル)です。

―― 2キロメートルの分解能というと、どの程度把握できているのでしょうか。

沖野 それは後でお見せします。2キロメートルだと小さい山は分からない。

 船で調査する場合、船から音波を出します。音は水中をうまく伝わるので。一般名称としては「ソナー」といわれる測深機(深さを測る機械)が船に載っています。

―― よく魚群探知とか、潜水艦を探したりするものですね。

沖野 はい。同じものです。そういうものから発達して、海底もそれで測ろうということです。昔の測深機は、船から下向きに音を出して返ってくるのを感知するだけなので、船の真下に点々と水深が分かるのみでした。その結果、船は地図を作るために何度も行ったり来たりしなければいけない。

―― 非常に狭い範囲しか測れないということですね。

沖野 はい。しかし、現在は、一度にたくさんの音響のビームを扇型に出すので、広い範囲の水深が測れます。今の深海用の標準的な測深機(マルチビーム測深機)だと、だいたい水深の3~4倍ぐらいの幅を一度に測ることができます。(照射する)ビームの数が150本とか200本とか出ますので、深さにもよりますが、数10メートルから100メートルぐらいの分解能になります。だから、(繰り返しになりますが)人工衛星の分解能は推定2キロぐらいで、船の場合、分解能は数10メートルか、悪くても100メートルぐらいです。

 ただ、それでも、例えば中央海嶺の丘ぐらいだと、丘(の存在自体)はこれ(マルチビーム測深機)で感知できるけれども、丘でどういう溶岩が流れているかなどは分からないのです。


●自律型ロボットの測...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
田島木綿子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤