釜石の子どもたちにみる防災教育
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由
釜石の子どもたちにみる防災教育(1)しっかり逃げる社会
片田敏孝(群馬大学名誉教授)
大きな地震は周期的に起こってきたが、およそ100年間隔となるとその記憶を次の世代に引き継ぐことが難しいという問題が生じる。そこで、片田敏孝氏は東日本大震災の8年前から釜石で防災教育に取り組んできた。その結果、子どもたちは自発的に津波から逃げる動きを取ってくれたという。(全3話中第1話)
時間:10分30秒
収録日:2019年3月30日
追加日:2019年6月1日
≪全文≫

●100年間隔では大きな地震の記憶をうまく引き継げない


 東京大学大学院情報学環特任教授の片田と申します。今日は日本の防災について、皆さんとともに考えてみたいと思います。東日本大震災から2019年で8年ということになります。あれだけの大きな被害を出した災害というのは、日本の防災の在り方をどう導いていったら良いのかと随分考えさせられるような災害でした。少しその辺りから話を起こしていきたいと思います。

 東日本大震災は、これまでわれわれが経験したことのないほどの災害でした。私は、この津波については特に釜石を中心に、防災の取り組みを行ってきました。海溝型地震の津波というのは、起こるかもしれない、あるいは起こらないかもしれないというものではなく、一定周期いわば必ず来るといっても過言ではありません。

 ところが、この東日本大震災の前、三陸沿岸でも、紀伊半島などでもそうなのですが、(地震の発生は)間もなくだと言われ続けていました。周期的にはそのときを迎えているということです。

 しかし、三陸であれ、紀伊半島であれ、日本全体がそうなのですが、時々、津波警報などが出ておりました。けれども、実際には避難率が低いということで、問題になっていました。なぜこのような状況なのかが大変疑問であり、さらにそのままこれを看過することは大変大きな被害をもたらすことにつながるという思いでいました。

 なぜこれだけ災害が多く繰り返されてきているにもかかわらず、逃げないという状況になっていくのでしょうか。確かに津波の場合は、おおむね100年ぐらいの間隔でやってきます。そうしますと、100年という月日は、世代でいうと、3世代ないし4世代を経て、次の災害ということになります。

 25歳で第1世代と考えれば、100年というのは第4世代になるわけです。そう考えますと、自分、お父さん、おじいさんを越えて、ひいおじいさんの時代にあったらしいというのが、100年間隔ということです。

 これは、災害の周期と人間の間隔としての100年が非常に不都合なことに、忘却には、また意識を低下させるには、ちょうどいいといったら変な言い方ですが、ちょうど一致しているというところが、前の災害の記憶も引き継げないということにつながっているのだろうと思います。

 そして、この100年間ぐらいを見ますと、日本の場合、先進国になっていく過程の中で、ハー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫