火山防災のため知っておくべきこと
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
予知の難しい火山噴火に対して事前にできる対策とは
火山防災のため知っておくべきこと(5)ハザードマップ
藤井敏嗣(東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長 兼 環境・防災研究所長/山梨県富士山科学研究所長)
さまざまな火山災害に対し、いかなる防災対策を取ることができるだろうか。現在の科学技術の水準では、火山噴火を正確に予知することは難しい。しかし、事前にできる対策としてはハザードマップの作成がある。これにより、効率的な避難計画を練ることもできる。(全6話中第5話)
時間:8分39秒
収録日:2019年3月29日
追加日:2019年6月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●火山噴火の予知技術は、現時点でまだ十分ではない


 前回まで、さまざまな火山現象に伴う災害のお話をしてきました。それでは、こうした火山災害に対して、どのような防災対策を行っていけば良いのでしょうか。

 噴火のエネルギーはものすごく大きいので、人間が制御することはできません。ですから、噴火が起こりそうだということを察知して、安全なところまで退避するということが身を守るための最大の方策です。

 そのためにはまず、火山の噴火を予知する技術を磨く必要があります。いつ起こるかだけではなく、噴火が起こった後も、次々と変わり得る現象を予測することが必要です。そうしないと、いったん避難しても、いつ戻って良いかが分かりません。

 こうした技術の発達が望まれるのですが、現在の科学技術の水準ではなかなか、現象や現象の推移を予期するまでには至っていません。特に現象の推移を見極めるのは、なかなか難しい状況です。そのため、噴火が始まった後にも観測装置を周辺部にたくさん設置して、何が起こるのかを観測する必要があります。


●ハザードマップや登山者の安全教育も重要である


 次に、あらかじめできることとして、ハザードマップの作成が挙げられます。ハザードマップとは、ある火山が噴火したら、どの地域にどのような災害が起こるかを予測するものです。噴火が始まった際には、このハザードマップに従って、影響のないところまで退避することができます。また、これに従って避難計画を作成したり、避難訓練を行うことも必要です。

 火山防災対策としての一番の問題は観光客や登山者の対策です。火山は大抵、風光明媚なところにあり、近くに温泉があるなど観光地にもなっています。つまり、住民だけが被害に遭うわけではなく、山頂近くにいる観光客や登山客が災害に遭う例も多いのです。それが御嶽山の事例や、2018年に草津の本白根山で突然の噴火が起こった際に自衛官が亡くなった事例でした。

 そのため、観光客や登山者の安全教育を行ったり、噴火が始まる前後で、迅速に情報を伝達することが非常に重要となります。

 土石流に関しては、桜島で行われているように、ある程度、二次災害に対応することができています。砂防ダムを造ったり、砂防堰堤を造ることで、制御しているのです。しかし、それ以外の一次的...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ