●火砕流は高速で襲ってくる
次は火砕流についてです。これは1990年から1995年にかけて雲仙普賢岳で起こった現象です。この写真にあるように、火砕流は時速100キロほどで斜面を走ります。ですから、火砕流が出たことに気づいて逃げようとしても、とても逃げられるものではありません。火砕流が到達しそうな範囲には決して近付かずいてはいけません。万一、火砕流が迫っていると感じたときには、火砕流の流れの方向に対して直行方向に逃げると、もしかしたら助かることがあるかもしれません。火砕流は非常に恐ろしい現象なのです。
火砕流の速度は時速100キロメートルぐらいほどにもなります。毎秒の速度でいえば、20メートルから100メートルぐらいまで変化します。問題は温度です。大抵の火砕流は400~700度ほどの温度があります。たまに100度ほどの温度の低い火砕流が出ることもあり、場合によっては巻き込まれても助かることがありますが、大抵の場合には巻き込まれたら命を失うと思ってください。
火砕流は、必ず地形的に低いところを流走します。そのため、避難する場合には可能な限り、高い所に向かう必要があります。それも数メートルほど高いところに行っても意味がなく、数10メートルから100メートルほど高い場所でないと、ほとんど逃げることができません。火砕流は時速100キロメートルほどで走るので、その風圧もものすごく激しいのです。立っている樹木がなぎ倒されてしまうこともあります。周辺部の熱の弱いところでもやけどをしたり、家畜が犠牲になる例も知られています。
●火砕流により麓の集落には泥水が襲うことも
もう一つが、融雪型火山泥流です。シリーズ1話目でもお話ししたように、雪が降っているところで火砕流が起こると、麓(ふもと)の集落に突然、泥水が襲ってくることがあります。
この写真は火口から随分離れた十勝岳の写真です。雨が降っていればある程度の予期はできるかもしれないのですが、雨が降ってないにもかかわらずこういうことが起こるので、融雪型の火山泥流には気を付ける必要があります。
●噴火により有毒な火山ガスが生じることもある
次は、火山ガスについてです。写真のように、火山ガスは少し紫色に見えます。こうしてみると大したことがないように思えますが、これは二酸化硫黄が多く含まれるので、これを吸い込むと、ぜんそくのような発作が起こり、場合によっては命を失うこともあります。また、金属製品を腐食させてしまうので、これが長く続くと、大変なことが起こります。
2018年のハワイでの噴火の際にも、溶岩流だけでなく火山ガスが大量に噴出し、森林が枯れてしまいました。
この画像は、少し画質が粗いのですが、土石流の様子です。桜島には火山灰が頻繁に降り積もるので、そこで雨が降ると、麓の方に土石流が押し寄せます。ただし、最近ではきちんとした堤防を造っているので、ほとんど被害を受けることはありません。これは非常に激しかった土石流の例です。
●火山は津波の原因にもなる
さらに、滅多に起こらないのですが、火山は津波の原因になることがあります。2018年12月にインドネシアで、地震が起こっていないのに突然津波が襲ってきて、何百人もの方が亡くなったという事件がありました。そこで何が起こったかというと、海の中にあった火山が突然、崩れたのです。そのため、土砂が大量に海の中に流れ込み、津波を起こしました。この津波のために、周囲の沿岸地域で犠牲者が出たのです。
左側にある写真は、山体崩壊を起こす前のアナ・クラカタウという火山です。すり鉢を逆さまにしたような山なのですが、これが突然崩れていきました。津波が収まった後で再びここに行ってみると、右のような様子になっていました。つまり、山頂部が完全に海の中に入り込んでしまっています。それがちょうど噴火をしている最中だったので、水と反応して、激しく爆発的な噴火がしばらく続いていました。
後に人工衛星で見たのが、次のような写真です。津波の発生前である左側の写真には山が確認でき、赤い枠の中に山頂部のドームのようなものが見えます。それに対して津波が発生した12月22日より後の24日に撮影したのが右側の写真です。ちょうど赤い枠の中にドームがなくなってしまい、周辺が波立っているように見えます。これは、海水とマグマが反応して、マグマ水蒸気噴火を起こしている様子を表しています...