火山防災のため知っておくべきこと
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
火砕流とは…なぜ巻き込まれるとほぼ助からないのか?
火山防災のため知っておくべきこと(4)火砕流と火山ガス
藤井敏嗣(東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長 兼 環境・防災研究所長/山梨県富士山科学研究所長)
火山に伴う現象で非常に恐ろしいものとして火砕流がある。火砕流は高速かつ高熱で、巻き込まれたらほぼ助からない。噴火によって有毒な火山ガスが噴出することもあり、森林に悪影響を及ぼすことがある。また意外と知られていないが、火山噴火が原因による津波も被害は深刻だ。(全6話中第4話)
時間:7分32秒
収録日:2019年3月29日
追加日:2019年6月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●火砕流は高速で襲ってくる


 次は火砕流についてです。これは1990年から1995年にかけて雲仙普賢岳で起こった現象です。この写真にあるように、火砕流は時速100キロほどで斜面を走ります。ですから、火砕流が出たことに気づいて逃げようとしても、とても逃げられるものではありません。火砕流が到達しそうな範囲には決して近付かずいてはいけません。万一、火砕流が迫っていると感じたときには、火砕流の流れの方向に対して直行方向に逃げると、もしかしたら助かることがあるかもしれません。火砕流は非常に恐ろしい現象なのです。

 火砕流の速度は時速100キロメートルぐらいほどにもなります。毎秒の速度でいえば、20メートルから100メートルぐらいまで変化します。問題は温度です。大抵の火砕流は400~700度ほどの温度があります。たまに100度ほどの温度の低い火砕流が出ることもあり、場合によっては巻き込まれても助かることがありますが、大抵の場合には巻き込まれたら命を失うと思ってください。

 火砕流は、必ず地形的に低いところを流走します。そのため、避難する場合には可能な限り、高い所に向かう必要があります。それも数メートルほど高いところに行っても意味がなく、数10メートルから100メートルほど高い場所でないと、ほとんど逃げることができません。火砕流は時速100キロメートルほどで走るので、その風圧もものすごく激しいのです。立っている樹木がなぎ倒されてしまうこともあります。周辺部の熱の弱いところでもやけどをしたり、家畜が犠牲になる例も知られています。


●火砕流により麓の集落には泥水が襲うことも


 もう一つが、融雪型火山泥流です。シリーズ1話目でもお話ししたように、雪が降っているところで火砕流が起こると、麓(ふもと)の集落に突然、泥水が襲ってくることがあります。

 この写真は火口から随分離れた十勝岳の写真です。雨が降っていればある程度の予期はできるかもしれないのですが、雨が降ってないにもかかわらずこういうことが起こるので、融雪型の火山泥流には気を付ける必要があります。


●噴火により有毒な火山ガスが生じることもある


 次は、火山ガ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦