●火山災害は広い範囲に影響を及ぼす
藤井敏嗣です。東京大学名誉教授で、現在は山梨県富士山科学研究所に勤めています。今日は、火山災害についてのお話をしたいと思います。
火山災害は水害などの他の災害と比べて、発生頻度があまり高くありません。また、火山災害が地震や風水害と異なるのは、いったん起こると、長く続くことがあるということです。場合によっては数カ月、数年もしくは数十年の間、噴火が続くこともあります。
また、火山災害は当初、狭いところから始まるのですが、時間がたつにつれて、どんどん災害区域が広がっていきます。この点も他の災害とは少し様相が異なる点です。さらに、いつも同じことが起こるわけではなく、ある現象が始まってから、その次に別の現象が始まる、というように連続的な側面もあります。このため、この連続的な現象に対する対処も、他の災害とは異なります。
さらに、規模の大きな噴火を起こす場合には非常に広い範囲が影響を受けます。例えば富士山が噴火をすると、100キロメートルほど離れた東京でも大きな災害が生じます。そのため、火山防災を考える際には、いろいろな現象について、正しい知識を持っていることが必要です。しかし現時点では、定型的な対処マニュアルのようなものはありません。したがって、噴火が起こると、どのようなことが起こるのかをきちんと理解する必要があります。
●さまざまな現象が重なったり連続して起こるのが火山噴火の特徴
火山噴火に伴う現象を、簡単な模式図で示しました。まず、マグマが地下深くから上がってきます。マグマとは岩石が溶けたもので、温度は1000度ほどです。高いときには約1300度までになることもありますし、低くても800度~900度で、非常に高温です。こうしたものが地上から上がってきて、表面に出てくるとそのまま溶岩流となり、斜面を下ることもあれば、山頂付近で非常に爆発的な噴火になることもあります。噴火すると噴煙がもくもくと成層圏まで上がっていったり、あるいは噴煙の一部が崩れて火砕流になったりします。
その噴煙と同時に、噴煙から火山灰が降ってきます。「火山れき」といいますが、少し大きくなると、「れき」という大きな塊が空から降ってくることがあるのです。それと同時に火...