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火山災害にはどのような特徴があるのか

火山防災のため知っておくべきこと(1)火山災害の特徴

藤井敏嗣
東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長/山梨県富士山科学研究所長
情報・テキスト
火山災害は他の災害に比べて発生頻度が高くなく、その特徴も一般にはあまり知られていない。しかし、火山噴火に伴う現象は、その影響が広範囲に及ぶため大災害につながることもある。それでは一体、火山災害にはどのような特徴があり、火山噴火に伴う現象にはいかなる種類があるのだろうか。(全6話中第1話)
時間:06:47
収録日:2019/03/29
追加日:2019/05/22
≪全文≫

●火山災害は広い範囲に影響を及ぼす


 藤井敏嗣です。東京大学名誉教授で、現在は山梨県富士山科学研究所に勤めています。今日は、火山災害についてのお話をしたいと思います。

 火山災害は水害などの他の災害と比べて、発生頻度があまり高くありません。また、火山災害が地震や風水害と異なるのは、いったん起こると、長く続くことがあるということです。場合によっては数カ月、数年もしくは数十年の間、噴火が続くこともあります。

 また、火山災害は当初、狭いところから始まるのですが、時間がたつにつれて、どんどん災害区域が広がっていきます。この点も他の災害とは少し様相が異なる点です。さらに、いつも同じことが起こるわけではなく、ある現象が始まってから、その次に別の現象が始まる、というように連続的な側面もあります。このため、この連続的な現象に対する対処も、他の災害とは異なります。

 さらに、規模の大きな噴火を起こす場合には非常に広い範囲が影響を受けます。例えば富士山が噴火をすると、100キロメートルほど離れた東京でも大きな災害が生じます。そのため、火山防災を考える際には、いろいろな現象について、正しい知識を持っていることが必要です。しかし現時点では、定型的な対処マニュアルのようなものはありません。したがって、噴火が起こると、どのようなことが起こるのかをきちんと理解する必要があります。


●さまざまな現象が重なったり連続して起こるのが火山噴火の特徴


 火山噴火に伴う現象を、簡単な模式図で示しました。まず、マグマが地下深くから上がってきます。マグマとは岩石が溶けたもので、温度は1000度ほどです。高いときには約1300度までになることもありますし、低くても800度~900度で、非常に高温です。こうしたものが地上から上がってきて、表面に出てくるとそのまま溶岩流となり、斜面を下ることもあれば、山頂付近で非常に爆発的な噴火になることもあります。噴火すると噴煙がもくもくと成層圏まで上がっていったり、あるいは噴煙の一部が崩れて火砕流になったりします。

 その噴煙と同時に、噴煙から火山灰が降ってきます。「火山れき」といいますが、少し大きくなると、「れき」という大きな塊が空から降ってくることがあるのです。それと同時に火口から直接石が、大砲の弾でも撃ったかのように飛び出してくることもあります。そうしたものは現在、気象庁では「噴石」と呼ばれています。

 あるいは、山頂からかなり高い位置まで噴煙が上がった後に、それが重いため崩れてくることもあります。そうすると、噴煙は斜面に沿ってものすごいスピードで駆け下ってきます。これが火砕流になります。また、いったん溶岩流あるいは溶岩ドームを山頂近くに造ったのち、それが崩れて火砕流になることもあります。

 その他にも、めったに起こらないことですが、火山の山体が突然、崩れることもあります。「山体崩壊」というのですが、これが生じると岩屑なだれが発生して、非常に広い範囲に災害が生じることもあります。

 このように、火山噴火に伴う現象とは本当にさまざまです。これら全てが同時に起こることはないのですが、1つだけで終わることもほとんどありません。幾つかが重なったり、連続して起こったりするというのが火山噴火の特徴です。


●火山噴火に伴う現象には突然、麓を襲うものもある


 噴火に伴う現象のうち、これまで日本で起こったものの代表的なものを写真で示しました。火山灰や噴石、火砕流、溶岩流、融雪型泥流などです。中部地方よりも北側の火山には、冬場になると雪が降り積もるのですが、そうしたところで火砕流が発生した場合に起こる現象のことを「融雪型泥流」といいます。火砕流の熱で雪が一斉に溶け、大量の水がつくられます。それが斜面を下って泥流となり、麓(ふもと)を襲うことがあるのです。

 このように、火山噴火に伴う現象の中には、天気が良く雨も降っていないのに突然、麓を襲うものもあるので、注意しておかないと、大変な災害を引き起こすことになります。

 また、火山灰がたくさん降り積もったときには、そこに雨が降ることで火山灰が雨で流され、麓の方に土石流として流れることもあります。さらに、これは分かりにくい現象なのですが、火口から大量の有毒な火山ガスが出ることもあります。スライドの右下の写真は2000年における三宅島噴火の際に島民が避難した後のものです。ものすごい量の火山ガスが出続けたため、島民は4年半にわたり、島外で避難生活をせざるを得ませんでした。
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