火山防災のため知っておくべきこと
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
火山灰と噴石による被害の特徴や与える影響とは
火山防災のため知っておくべきこと(2)火山灰と噴石
藤井敏嗣(東京大学名誉教授/環境防災総合政策研究機構・副理事長 兼 環境・防災研究所長/山梨県富士山科学研究所長)
火山噴火に伴う現象として、まずは火山灰と噴石が挙げられる。火山灰とは急冷されたマグマが砕かれてきた小さな破片のことで、それが降り積もるものだ。他方、噴石とは火口から大砲の弾のように飛んでくる石のことである。両者とも火口からの距離によって被害は異なるが、留意していないと非常に危険な帰結を招く。(全6話中第2話)
時間:12分06秒
収録日:2019年3月29日
追加日:2019年5月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●火山灰の特徴


 火山噴火に伴う現象を、これから順番に説明していきます。

 まずは、火山灰と大きな噴石です。この写真は2000年の有珠山の噴火の時のものですが、アパートや民家の屋根が銀色に光っているように見えます。これは火山灰が降り積もった様子を表しています。10センチメートル以上も降り積もっているのですが、同時にそこに黒い穴が開いているのが分かると思います。これが大きな噴石です。大きな噴石が火口から大砲の弾のように撃ち出され、落ちてきてここに穴を開けました。アパートの天井を突き抜けて、部屋まで落ちたこともあります。道路の辺りにもたくさん噴石が落ちているのですが、これが人に当たった場合、すぐに命を落とすこともあり得ます。幸いにして、2000年の有珠山噴火では、噴火前に1万6000人が避難をしていたので、1人のけが人も出ませんでした。

 次に、火山灰の特徴をお話しします。火山灰とは、急冷されたマグマや岩石が砕かれてできた破片のうち、サイズが2ミリより小さいもののことです。つまり、基本的には石のかけらです。ですから、木や紙を燃やしてできる灰とは全く異なります。降り積もると重いのです。

 また、火山灰は石のかけらなのでトゲトゲしており、目の中に入ったりすると、角膜を傷つけることもあます。そして火山灰には有毒なガスが吸着されているので、水に濡れると電気を通しやすいものになります。例えば、碍子に降り積もったところに雨が降ると、硫酸の薄いものができます。このためにショートが起こり、停電が起こることもあります。さらに、乾燥しているときに地面にうっすらと火山灰がある状態でも、車が通るとそれらがすぐに舞い上がり、周りがほとんど何も見えなくなることも起こります。

 積もるという点では雪と似ていますが、雪と違うのは、いったん降り積もったら、溶けることはないということです。人力で除けない限り決してなくならなりません。そのため、鉄道などに降り積もったものも全て除去しないと、動かせません。

 この写真を見ると分かりますが、火山灰が降っている最中は、その真下が真っ暗になります。それに対して、火山灰が降っていないところは、非常に明るいということが分かります...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男