行政との関係構造から考える防災
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
思想なき防災の混迷状態にあるのが日本の防災の現実
行政との関係構造から考える防災(2)コミュニティ再構築
片田敏孝(群馬大学名誉教授)
阪神・淡路大震災以後も行政主導の防災は継続されていったが、東日本大震災は行政による防災の限界を示すものとなった。日本の防災は今、思想なき防災の混迷状態にある。今後、地域社会において目指すべきは行政と住民とが一緒になって防災に取り組むことである。(全2話中第2話)
時間:10分16秒
収録日:2019年3月30日
追加日:2019年6月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●阪神・淡路大震災以後も従来の防災は継続された


 行政は阪神・淡路大震災があったからこそ、構造物の耐震性を強めたり、堤防を高くしたりということで、ハード対策を強めてきました。一方、住民の中には、行政の対応に限界があるということで、ソフト対策も大事、情報も大事だからそれらを確認しつつも、自らの避難については自らが判断するというような、自助の意識ができてきたと思うのです。

 しかし、これまでの長年にわたる過保護状態の中で、具体的に自らがどういう行動を取ればいいのかというところまで、思いは至らなかったのでしょう。行政がハード対策ということでその強化を進める中、住民は自助ということが何を意味するのか、具体的にどう行動すればいいか、よく分からないまま、それ以降を過ごしたのだろうと思うのです。

 われわれも、研究者であり技術者であるわけですから、科学によって解明し技術によって災害を抑止するという、その基本構造を踏まえ、そうした方向性を目指すわけなのですが、阪神・淡路大震災の経験にさらなる研究費の積み増しを求め、研究に邁進してきたわけです。


●東日本大震災は強化するという従来の防災の限界を示した


 ところが、こういった従来の防災を、住民レベルでも、行政レベルでも、またはその額のレベルでも、ただただ強化するという方向性に根本的な最終通告を突き付けたのが、東日本大震災だったと思います。

 10メートルの堤防を造りました。しかし、津波は20メートル、30メートルをはるかに越え、堤防をしのぐものでした。膨大な犠牲者が出ました。情報も適時適切に出すということにはなってきていたのですが、これだけの大津波を予測することができませんでした。よって、情報が全て適時適切だったかというと、そうでもありませんでした。情報にも限界があるということが分かりました。

 住民の皆さんも阪神・淡路大震災以降、自助が大事だという意識はあった。しかし、あの時、何をすることが自らの自助を高めるかということに思いは至らなかったのだろうと思うのです。

 阪神・淡路大震災以降、日本における自助の意識の芽生えは確かにあったのですが、それが向かった方向は、「絆」という言葉に象徴される、被災した後の助け合い精神の議論でした。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏