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行政主導ではなく、住民が主体となって行う防災への転換

日本の防災の課題(2)行政サービスから行政サポートへ

片田敏孝
群馬大学名誉教授
概要・テキスト
ハザードマップが正しく活用されないという課題が見えたことで、日本の防災対策は見直しが迫られた。覚えておくべきは、いくら対策をしてもリスクはゼロにはならないということである。そのためには行政主導ではなく、住民が主体となって防災を行わなければならない、と片田敏孝氏は語る。(全3話中第2話)
時間:07:43
収録日:2019/03/30
追加日:2019/06/08
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≪全文≫

●防災対策を見直す必要があった


 そのような中でこれまでの防災ですが、われわれは「ハザードマップを見てください。可能性としてこれだけの浸水の可能性があります。いち早く避難をしてください」と言いながらも、本当にそのようにすぐに避難できる社会になっているかというと、われわれが求めているものと現実社会の間に少し乖離があるように思えてならないのです。

 何か今、日本の防災は根本的なところを見直さなければいけない時期に来ているのではないかという、漠然とした思いを持って現地を見てきました。

 そして、2018年の7月豪雨については200人を超す多くの犠牲者が出たということもあって、内閣府中央防災会議の中に「平成30年7月豪雨による水害・土砂災害からの避難に関するワーキンググループ」という作業部会が立ち上がり、私はその委員になりました。

 7月豪雨ですから7月にあり、そして12月には報告書が出るということで、非常にスピードのある議論が展開されました。議論は3回行われたのですが、その中で最初の会議の時に、私は冒頭で発言しました。



●いくら対策をしてもリスクはゼロにはならない


 私は防災研究者になって、20年ぐらいになります。当初より、このように災害があるたび、何が問題であったのか、課題であったのかを真摯に反省し、対策を強化する、すなわち課題を抽出し、対策を講じることを繰り返してきました。

 そして今回の7月豪雨に関してもまた反省があるでしょう。対策が講じられるでしょう。しかし、こういう議論の仕方をしていて、10年たったとき、本当に災害はなくなっているのだろうか。私はきっと同じ議論をしていると思います。災害は毎回、毎回、手を替え、品を替え、やってくるわけです。前回の反省に基づいて対策を強化し、その対策を積み重ね続けてきて、今日、なお災害があるというこの状況を見ると、議論の仕方を変える必要があるのではないでしょうか。

 災害は、もちろんそこに学び、教訓を得ることは大事なことだと思います。しかし、教訓とは過去の災害に学ぶ対処の処方箋です。それを超えてくる災害に対しては、その処方箋が有効である保証はありません。

 過去の災害に学んで、講じた策をもって対策を行うことは、それ自体必要ではあるものの、それをもって万全と考えることは間違いだ...
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