神話の「世界観」~日本と世界
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「くらげなす漂える島」日本は「吊り橋国」である
神話の「世界観」~日本と世界(6)日本人を日本人たらしめたもの
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
大正時代、『古事記』に魅せられたロシア人のワノフスキー。彼もまた日本神話を自然主義的に解釈した。そして、それが、わが国において次々に自然が起こす災難が「日本人を日本人たらしめた」という寺田寅彦の解釈とつながっていくことになる。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分16秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年10月24日
≪全文≫

●寺田寅彦の解釈とつながる亡命ロシア人ワノフスキーの視点


鎌田 (寺田寅彦と)ちょうど同じ頃に、ロシア人のワノフスキーが日本に亡命してきました。彼はレーニンと一緒に革命の志士として活動していた人物です。その後、ソビエト体制になっていく過程で、彼は分派といいますか、対立し、やがて日本に亡命してきます。大正10(1921)年前後だったと思います。

 そして日本に住み、早稲田大学でロシア語の先生をしながら生計を立てていきます。亡命者ですが、日本の『古事記』に非常に関心を持ち、『古事記』の研究をし始めます。

 その後、『火山と太陽』という本に古事記解釈をまとめ、元々社という出版社から1955年に出版します。

―― これは先ほどの寺田寅彦の視点と非常に通じていますね。

鎌田 はい、寺田寅彦の考え方と非常に似ています。例えば、日本の物語は火か太陽か――同じ「ヒ」ですが、火と日という2つの「ヒ」の対決の物語――と見ています。Fire(火)がスサノヲで、Sun(日)がアマテラスです。アマテラスがスサノヲを鎮める、つまり太陽が火山をうまく鎮めるという構造になっているのです。

 火山の神の系譜をたどるとイザナミ(スサノヲのお母さん)ですから、スサノヲも火山の神です。オオクニヌシも火山の神であり、息子のコトシロヌシ、タケミナカタも火山系の神です。サルタヒコや熊野の神々もみな火山系の神々で、やはり恐ろしい暴発する破壊的な力を持っています。世界は洪水にせよ何にせよ、ダイナミックで破壊的な力という、荒ぶる現象をもたらしますね。

 一方で、それを恵みに変えていきます。イザナミに対して、夫のイザナギは火山を鎮めるほうです。スサノヲに対するアマテラスも、それを鎮めるほうです。コトシロヌシ、タケミナカタ、オオクニヌシに対し、国譲りを迫ったタケミカヅチ、フツヌシも火山を鎮める神です。サルタヒコに対して、天孫降臨したニニギ(ノミコト)や、その付き人であったアメノウズメは、それを鎮める側である。熊野の荒ぶる神に対して、神武天皇やタカクラジはそれを鎮める側です。

 このように、火山の発動を体現する神々のキャラクターと、火山を鎮める神々のキャラクターとの2つの系統で捉えるのも、先ほどの寺田寅彦の解釈とつながって、非常に興味深...

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