神話の「世界観」~日本と世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「くらげなす漂える島」日本は「吊り橋国」である
神話の「世界観」~日本と世界(6)日本人を日本人たらしめたもの
鎌田東二(京都大学名誉教授)
大正時代、『古事記』に魅せられたロシア人のワノフスキー。彼もまた日本神話を自然主義的に解釈した。そして、それが、わが国において次々に自然が起こす災難が「日本人を日本人たらしめた」という寺田寅彦の解釈とつながっていくことになる。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分16秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年10月24日
≪全文≫

●寺田寅彦の解釈とつながる亡命ロシア人ワノフスキーの視点


鎌田 (寺田寅彦と)ちょうど同じ頃に、ロシア人のワノフスキーが日本に亡命してきました。彼はレーニンと一緒に革命の志士として活動していた人物です。その後、ソビエト体制になっていく過程で、彼は分派といいますか、対立し、やがて日本に亡命してきます。大正10(1921)年前後だったと思います。

 そして日本に住み、早稲田大学でロシア語の先生をしながら生計を立てていきます。亡命者ですが、日本の『古事記』に非常に関心を持ち、『古事記』の研究をし始めます。

 その後、『火山と太陽』という本に古事記解釈をまとめ、元々社という出版社から1955年に出版します。

―― これは先ほどの寺田寅彦の視点と非常に通じていますね。

鎌田 はい、寺田寅彦の考え方と非常に似ています。例えば、日本の物語は火か太陽か――同じ「ヒ」ですが、火と日という2つの「ヒ」の対決の物語――と見ています。Fire(火)がスサノヲで、Sun(日)がアマテラスです。アマテラスがスサノヲを鎮める、つまり太陽が火山をうまく鎮めるという構造になっているのです。

 火山の神の系譜をたどるとイザナミ(スサノヲのお母さん)ですから、スサノヲも火山の神です。オオクニヌシも火山の神であり、息子のコトシロヌシ、タケミナカタも火山系の神です。サルタヒコや熊野の神々もみな火山系の神々で、やはり恐ろしい暴発する破壊的な力を持っています。世界は洪水にせよ何にせよ、ダイナミックで破壊的な力という、荒ぶる現象をもたらしますね。

 一方で、それを恵みに変えていきます。イザナミに対して、夫のイザナギは火山を鎮めるほうです。スサノヲに対するアマテラスも、それを鎮めるほうです。コトシロヌシ、タケミナカタ、オオクニヌシに対し、国譲りを迫ったタケミカヅチ、フツヌシも火山を鎮める神です。サルタヒコに対して、天孫降臨したニニギ(ノミコト)や、その付き人であったアメノウズメは、それを鎮める側である。熊野の荒ぶる神に対して、神武天皇やタカクラジはそれを鎮める側です。

 このように、火山の発動を体現する神々のキャラクターと、火山を鎮める神々のキャラクターとの2つの系統で捉えるのも、先ほどの寺田寅彦の解釈とつながって、非常に興味深...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二