神話の「世界観」~日本と世界
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北欧神話に登場する三神と日本の神々には共通性がある
神話の「世界観」~日本と世界(2)北欧神話との共通性
鎌田東二(京都大学名誉教授)
北欧神話の中にはオーディン、トール、フレイという重要な三神がおり、この三神は日本神話に登場する神ととても似た面を持っている。なぜ北欧ではこれらの神々が奉られているのか。日本神話との共通性とともに見ていこう。(全8話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分22秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年9月26日
≪全文≫

●北欧神話に登場する流浪の詩神


鎌田 今日は北欧神話を例に取ってみましょう。前回インドの最高三神がブラフマン、ヴィシュヌ、シヴァだと言いましたが、北欧の中で非常に重要な神々として崇められてきたのが、オーディン、トール、フレイという三神です。

 スウェーデンにウプサラという都市があり、ウプサラ大学という昔から神学が非常に栄えた大学もあります。そのウプサラに(かつて)あったウプサラ神殿には、この三神の神像が建立されていました。オーディンはドイツ語でヴォータンともいい、日本のスサノヲノミコトに非常に似ている神です。

―― どちらかというと、荒ぶる感じの神様ですか。

鎌田 はい。非常に狂ったように荒ぶったり、激怒したりする神でありつつ、流浪(エグザイル)します。スサノヲノミコトも、遍歴して出雲に降り立ち、そしてヤマタノオロチを退治するでしょう。そのように流浪して、詩をうたう。そのようなスサノヲノミコトが「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」とうたって日本最初の和歌神になっていくように、オーディンも詩人の神、詩的な存在とされています。

 そして、風や嵐の神という性格を持っています。例えば、世界ができあがって風が吹く、水が流れる、土ができて陸ができる、火が燃えて噴火するという自然現象は、世界で共通の普遍的なものですね。世界ができあがってくる世界観――世界創造神話の中での地水火風、儒教・道教的に陰陽五行でいえば木火土金水のような基本物質、基本元素――には普遍性があるのです。

 そのため、火の神、水の神、風の神といった神々は、名前こそ違うけれども世界の至るところで、いろいろな神々として登場します。風の神、嵐の神はヒンドゥー教でも出てくるし、日本でもシナツヒコ、シナツヒメといった形で出てくる。北欧神話でも『古エッダ』『新エッダ』などのエッダの神々において、あるいはゲルマン神話の中でも出てきます。もちろんギリシャ神話でも出てくるわけです。


●崇拝される農耕を司る神


鎌田 それがオーディンで、次はトールです。トールがその三体の神像の中でも一番大きい姿で描かれていて、農耕に関わるということでとても崇拝されたそうです。

 アマテラスオオミカミが非常に崇拝されることになるのは、「斎庭(ゆにわ)の稲穂の神勅」といっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦