神話の「世界観」~日本と世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
不老不死と黄金のリンゴ…神話が教える世界と日本の違い
神話の「世界観」~日本と世界(4)不老不死と「黄金のリンゴ」
鎌田東二(京都大学名誉教授)
北欧神話と日本神話の決定的な違いは終末論の有無であり、そこから死の問題へとつながっていく。不老不死は人間の探求する一つの究極の理想ともいえるが、それと関連する神話として「黄金のリンゴ」という物語がある。それはどういうものなのか。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分06秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年10月10日
≪全文≫

●北欧の環境が終末論をつくった


鎌田 日本神話の楽天性がどこから生まれてきたのかといえば、やはり気候風土が1つの基盤にあります。日本という気候風土は人々が住みやすく、いろいろな変化はあっても、その変化の中で人間にいろいろな恵みがもたらされてきます。そのため、手にかけながら栽培をしたり、さまざまに手当したりしながら維持していけば、実りはずっと続いていく。このような生活感覚があったから、楽天的な神話が維持されてきたのだと思います。

 ところが北欧神話ですが、(北欧では)夏は白夜で、夜も明るいような日が続きます。しかし冬になったら数時間しか日照時間がないなど、ほとんど闇に閉ざされている。そのような気象環境、自然風土の中で育っていくと、世界が闇に包まれてくるという考え方が、当然ながら出てきます。

 そして、神々には2つの戦いがあります。夏と冬もそうですが、氷の世界と火の世界、昼の世界と夜の世界といった2つの戦いの中で、破壊と新しい打開が繰り返されるのだけれど、最終的には破滅してしまうという終末論的な考え方が出てきます。北欧神話の中には、そういった終末論的な世界最終戦争のようなものが起こり、そして神々も世界も滅んでしまうといった物語があるのです。

―― 神々も含めて滅んでしまうわけですね。

鎌田 神々も最終的には不死ではありません。日本の神々も死にます。神々の中には不死の神と死ぬ神の両方があります。日本の神々はほぼ死ぬのですが、でも神々の死は単なる死ではありません。死んでもずっと霊性として祀られ続け、存在し続けていると考えられているので、いわゆる人間が個体として死ぬというものではないのです。

 イザナミノミコトは死んで黄泉の国へ行くとなっています。でも黄泉の国で1つの存在性を発揮し、黄泉の国を動かしていくような力を持つ神になるわけです。

 オオクニヌシノカミも国譲りをした後、幽世(かくりよ)に行って、幽世の神としてこの世界を霊界のほうから支えるという位置づけになっていきます。このように、神々は死んでも、また違う存在性として働き続けていくという考えはあります。けれど、まったく死なない(不死)というわけではありません。


●人間が求め続けた不老不死


鎌田 その中で(北欧神話とか、ギリシャ神話では)「黄金のリンゴ」という神話物語があります。不老不死は、人間の探...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘