神話の「世界観」~日本と世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本人を日本人たらしめた災難教育とは何か
神話の「世界観」~日本と世界(7)神代から続く日本人の「災難教育」
鎌田東二(京都大学名誉教授)
日本人は神代の時代からずっと災難教育をやってきた、と寺田寅彦は指摘した。自然災害の多い日本には四季の循環がある。そこに「揺るがない巡りがある」というムスヒの生命力に対する絶対的な信頼が生まれてくるのではないか。そして話は、自然界の大きな巡りの根本にある「荒魂」と「和魂」へと進んでいく。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分13秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年10月31日
≪全文≫

●神話は、それぞれの国や地域の風土を表している


鎌田 日本人を日本人たらしめた災難教育とは何か。『古事記』の時代からの「くらげなす漂える国」の「むすひの力」というものが、修理固成する働きになりました。修理固成しなければならないのは、荒ぶる神やちはやぶる神がわれわれの世界にさまざまな作用を及ぼすから、それをなんとか恵みの神へ(災いではなく、幸いをもたらしてくれる神へ)変形・転化しなければいけません。それが祭や儀式であるということになります。

 昔は国のことをいろいろな言い方で表しました。大きな島々が八つあるので「大八島国」。葦が生えている湿地帯を多く持っているので「葦原中国」。お米が植えられて豊かに実っていくので「豊葦原瑞穂国」。これは1つの祝福の意味を込めています。そして、もっとも原型となる、日本の変動性のある浮遊しているような状態を「くらげなす漂える(国)」と言いました。

 そのようなくらげなす漂える国が大八島国であり、葦原中国なのだけど、そこを天孫であるアマテラスの子孫が豊葦原瑞穂国に変えて、この国を維持しようとした。それが大嘗祭という天皇の祭祀にまでつながっていくというのが、『古事記』や『日本書紀』に書いてある神話の一つの重要なメッセージになりますね。

 これを見ると、世界の自然風土の成り立ちについて、それぞれの国がさまざまなバリエーションやバージョンの物語を作っていることが分かります。自然と人間の関わり、そして自然がどういう特徴を持っているかについて、とても注意深く観察しながら、生き生きとしたダイナミックな物語として、それぞれ語っているのです。これは驚嘆すべき物語力ですよね。

―― そうですね。

鎌田 すごいですよね。このような神話を創り上げる能力というのは。

―― どういうところから発想が出るのでしょうか。今回のお話のように自然環境――火山であったり、あるいは北欧のほうだと白夜があったり、反対にずっと暗いときもあったり、両極端のものがある。そのような環境、風土の中から自ずと生み出されてくるものなのでしょうか。

鎌田 ですから、熱帯雨林があると、熱帯雨林の特性を説明する...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男