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長編詩「大国主」と4つの魂…和魂、荒魂、幸魂、奇魂

大国主神に学ぶ日本人の生き方(5)長編詩「大国主」を読む

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
『悲嘆とケアの神話論ー須佐之男と大国主』(鎌田東二著、春秋社)
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幾度となく理不尽な目に遭う大国主神の性質や様子を、世界神話の神々と比較しながら描いた鎌田氏の長編詩「大国主」。『古事記』を「世界の中の叙事詩の伝統」の中に位置づけてきた鎌田氏が、『古事記』の神聖な響きを維持しながら、『古事記』がどのようなメッセージを含み持っているのかを、現代の詩の形で表現したものである。この「詩」で描かれるものやメッセージとは、どのようなものか。実際に詩を朗読しながら、この世の現象を表す和魂、荒魂、幸魂、奇魂という「4つの魂」とともに解説する。(全9話中5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:55
収録日:2023/08/08
追加日:2024/01/07
≪全文≫

●長編詩「大国主」の由来


―― いよいよ次のパートからは先生の詩をご紹介しつつ、先生に解説いただいた物語を再び味わおうというところになります。これはそもそもどういった状況でお書きになった詩なのですか。

鎌田 コロナ禍が3年半近く続いたわけですが、コロナ状況になって2021年から『絶体絶命』という詩集を書き始めました。

 私は神道ソングライターとして活動していて、サードアルバムのレコーディングを始めたのです。月1回、曽我部晃さんという相棒のスタジオに通い、レコーディングが順調に進んでいった矢先の2022年2月24日に、ロシアによるウクライナ侵略が起こった。これによって、本当に“絶体絶命”の感がいっそう強まりました。歌も大事だけれども、それまで『常世の時軸』『夢通分娩』『狂天慟地』という3冊の詩集を出していて、『狂天慟地』は天が狂って、地がわななく、慟哭するというものです。そこから第4詩集の『絶体絶命』に至ったわけです。

 歌もいいけれども、3番目の詩集の次に第4番目を出さねばならないという気になって、1週間でバーッと書き上げたのが、この『絶体絶命』という詩集です。その『絶体絶命』の詩集を第1部、第2部、第3部に分けて、(これから紹介する「大国主」の詩を)第3部に最初は置いたのです。それを川上さんに見てもらった。

 川上さんが『絶体絶命』の草稿段階のもの、私が校正したものを見て、「鎌田さん、これはやはり冒頭に置くべきではないですか。そのほうが絶対にインパクトがありますよ」と言った。

―― 生意気なことを申し上げました。

鎌田 いえいえ。それで第1章にその詩をもってきたのです。川上さんの「なおし」の力で、私が最後に置いたものを一番前に持ってきた。冒頭に「序詩 常若の教え」を置いて、その次に第1章から始めたわけです。


●大国主――なぜこれほどの重荷を背負わねばならないのか?


―― そのような詩です。まず、これが冒頭の部分になります。先生、お願いしてもよろしいでしょうか。

鎌田

 大国主

 なぜこれほどの重荷を背負わねばならないのか?

 おほくにぬし
 おほなむぢ
 あしはらしこを
 やちほこ
 うつしくにたま
 あめのしたつくらししおほかみ

 いくつもの名前をもつ
 あなたは
 名前が多ければ多いほど
 重荷も多い
 重荷が重...
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