小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
小林秀雄をより深く理解するための「近代日本小史」
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(2)なぜ「批評」は昭和初期に登場するのか
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
日本は明治維新によって西洋近代化へと大きく舵を切るが、それは大きな矛盾を抱えた大改革だった。そして「和魂洋才」という言葉が象徴するように、日本の国体主義と西洋の資本主義を両輪に推し進めた結果、経済は発展していった一方で農村の荒廃を招き、人々の不安が広がった。その揺れ動く心を支えたのが小林秀雄の論評だった。今回は明治維新から小林秀雄の登場までを、近代日本小史として解説する。(全7話中第2話)
時間:15分04秒
収録日:2023年4月7日
追加日:2023年8月22日
≪全文≫

●小林秀雄を理解するには近代日本小史から


 皆さん、こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。今回は、吉本隆明あるいは小林秀雄についての講義の第2回目です。いよいよ小林秀雄について少し見ていきたいと思っているわけです。

 ただ、先にこれも結論から言っておきますが、小林秀雄は「近代批評の祖」とか、「近代文芸批評の父」とか、そのようにいわれることが多いのですが、重要なのは、彼が昭和初期に登場してきていることなのです。

 実は前回の講義の中で二葉亭四迷の話を少ししましたが、彼は明治20年代に出てくるのです。それで言文一致をつくって、日本の近代小説の父になっていくわけです。ただ、小林秀雄は「近代批評の祖」といわれながら、なぜか昭和なのです。これは実は意味があると私は思っています。というのは、昭和にならないと出てこない問題があったからだといえるかと思います。

 ということは、小林秀雄の言っていること、あるいはやっていることを理解するためには、ちょっと日本近代史をさらっておく必要があるし、たぶんそちらのほうが小林秀雄の言っていることが分かりやすいと思います。それでちょっと今回は、「近代日本小史」と名づけて少し議論をしていきたいなと思っています。

 まず見ておきたいのは、明治維新からということになります。これは本当に簡単にまとめるしかないのですが、薩摩と長州による尊王倒幕思想があったということはもう皆さんご存じだと思います。最初は尊王攘夷だったのです。攘夷ということは外国を打ち払うということなのですが、これが薩摩と長州が逆に負けることによって、尊王攘夷ではなく、攘夷はできないから、倒幕をして、その限りにおいて私たちの政府をつくり上げ、日本を西洋近代化してより強くするということに舵を切るのです。

 つまり彼らは、日本の独立を守るために、西洋近代化をしなければならないのだということを語り出します。しかし、これは非常にアイロニカルです。つまり日本の独立ということは、日本ということが主語なのですが、そのためになんと西洋化するということですから、非常に矛盾に満ちた、そのような作業をせざるを得なかったのです。

 これを「和魂洋才」と当時言ったわけです。これは幕末の思想家である佐久間象山という人が言ったわけですが、そういう矛盾を強...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫