●破壊では終わらない。大きな甦り、循環や修理固成が生まれる。
―― また詩でございますが、先の部分のほうに進んでいきたいと思います。先生がご解説くださったうちの、これは2つ目のパートですね。
鎌田 たすけ
おほくにぬし
大国主の神
たしかに
あなたの名前は雄大であるが
しかし
あなたほど弱い神はいなかった
あなたは 最強の神スサノヲの子孫の中で 最弱の神だった
だが そんな最弱の神であるあなたが スサノヲの霊統を受け継いだ
スサノヲの衣鉢を継いだ
スサノヲの霊統とは
傷む神であること
傷み 痛み 悼む神であること
そのいたみとかなしみが うたとなる
歌う神
あなたに宿命づけられた霊性とは
そんな歌う神の霊統であった
父祖スサノヲの場合
その歌の始まりは喪失にあった
この後どのように続くかというと、お母さんを失った。お母さんを失って泣き叫んでいる、その泣き叫び、悲しみを、父も姉もよく理解しなかった。その理解されなかった悲しみが暴力にもなって、粗暴な振る舞いにもなっていくという構造で、いってみれば不良少年の原形的な物語です。
―― 誰にも理解されないというところからだと。
鎌田 僕は誰にも理解されない。独りぼっちだという孤独感や孤立感のようなものが暴力になっていく。暴力が外に向かう場合もあれば、自己に向かう場合もあります。そういう暴力的なものが生まれてくるということです。
これはある種、普遍的な構造を持っていると思うのです。ダメージを受け、傷ついた自分を建て直していくためには、何らかの形で荒ぶりが生まれてくる。その荒ぶりが、内にも外にも向かって攻撃性になってくる。それはある種の残虐なふるまいを生み出す。破壊も生み出す。
でも、破壊で終わるわけではない。そこをどうやって通過するかによって、大きな甦り、循環や修理固成が生まれる。スサノヲの場合は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治することによって、その心が晴れていき、犠牲になろうとしていた寸前のクシナダヒメを助けたわけです。助けることによって自分も救われていくわけです。そして歌うことによって、その浄化がさらに完成していく。そういったプロセスを辿っていくスサノヲ神話が持つメッセージ力も非常に重要なのですが、そのスサノヲの直系がさらに次のバリエーション...