李登輝に学ぶリーダーの神髄
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
李登輝と松下幸之助に共通していた「自我を越えた目線」
李登輝に学ぶリーダーの神髄(9)自我からの脱却
政治と経済
江口克彦(株式会社江口オフィス代表取締役社長 /元参議院議員/PHP総合研究所元社長)
江口氏が李登輝に最後に会ったのは、李登輝が亡くなる7カ月前のことだった。その折、江口氏が「台湾という立派な国をつくられましたね」と言葉をかけると、李登輝は江口氏の顔をじっと見て、「まだまだだよ」と返答したという。そこには、「主権国家として、まだ確実に台湾という国家は成立していない」という切なる思いが込められていた――そう江口氏は語る。国の統治について李登輝の考えの根本にあったのは「自我からの脱却」であった。その点では経営の神様といわれた松下幸之助も同じであった。この偉大なる2人は、自分にとらわれず、いわば神の目線から物事を見つめて、判断していたのである。(全10話中第9話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:9分59秒
収録日:2020年8月24日
追加日:2020年12月23日
≪全文≫

●世界中の国から「国家」として認められてこそ


―― その意味では安倍政権になったことは、李登輝さんから見て「日本精神に近い人たちが政治を担ってくれた」という安心感があったのですね。

江口 そうですね。ただ李登輝さんにとって、私が最後に会った日本人だと思います。亡くなったのが(2020年)7月30日で、その7カ月前の(2019年)12月24日に会っています。その前の1年間は、誰にも会っていませんから。

「『会う』と言っていますが、江口先生が来られても当日の気分でどう変わるか分かりません。それは覚悟しておいてください」と言われ、それを承知で行ったのです。すると2階から車椅子に乗ってエレベーターで降りてきて、ドアが開いた途端、「江口さん、よく来てくれたねえ」と。秘書長のほうがびっくりしていました。

 それでいろいろと耳元で話したり、あるいは「今、日本はこうですよ」とか「台湾も蔡英文さんが再選されて良かったですね」といった話をして、「これで一つ階段はのぼったね」と。ただ、「李登輝総統は台湾という立派な国をつくられましたね」と言うと、私の顔をじっと見て、「まだまだだよ」と。

 これが、きちんとした会話の最後の言葉でした。あとは「よく来たね」とか「また来てくださいよ」といった話だけです。

―― すごい人ですね。

江口 「まだまだだよ」とは、どういう意味か。「主権国家として、まだ確実に台湾という国家は成立していない」という意識なんです。世界中の国から、国家として認められる。それで初めて、国家としての証明になる。そこまで成し遂げてこそ、「台湾is台湾」となる。その意味で「まだまだだよ」と言ったと、私は直感的に思いました。

 だから李登輝さんが私に遺した、日本人に託した思いは、「台湾を国家として正式に認めてくれ」という切実さが込められているように感じました。


●松下幸之助との共通点


―― やはり最高指導者は、神と対話しながらやらなければならないのでしょうか。

江口 李登輝という人はとにかく「周囲からの脱却」の次に、「自分からの脱却」でした。自分に囚われず、キリストを拠り所に、神の目線から国の統治を考えた。

―― 自分から脱却したあとですね、問題は。

江口 誰でも自我は目覚めますから、まずは周囲からの脱却。それは自我の芽生えで、誰でもそうです。「親に反抗する」といったところから...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
営業から考える企業戦略(1)成功するブランド戦略とは?
ブランド力を高めるために「自社の強み」を徹底的に聞け
田村潤
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ