生き続ける松下幸之助の経営観
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従業員を喜ばせるためには何をすべきかを考える
生き続ける松下幸之助の経営観(4)従業員を喜ばせるため
江口克彦(株式会社江口オフィス代表取締役社長 /元参議院議員/PHP総合研究所元社長)
松下幸之助は従業員を喜ばせることを考えて経営を行っていた―株式会社江口オフィス代表取締役社長の江口克彦氏はそう語る。世界大恐慌の際には、松下電気器具製作所も倒産寸前になったが、松下幸之助は従業員を喜ばせることを考えて、人員も給料も削減しなかった。これに感動した従業員の頑張りにより、恐慌を乗り越えたのである。(2018年5月31日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「生き続ける松下幸之助の経営観」より、全12話中第4話)
時間:10分09秒
収録日:2018年5月31日
追加日:2018年10月16日
≪全文≫

●松下幸之助は世界大恐慌を前にしても人員や給料を削減しなかった


 皆さんもご承知のことだと思いますが、昭和4年に世界大恐慌がありました。その時には、日本は大変な不況になってしまい、とりわけ大阪の会社はばたばたと倒産して行きました。松下電気器具製作所は町工場でしたから、非常に小さな会社でした。ですから当然のことながら、同じように倒産寸前になりました。

 総大将である松下幸之助さんは、先ほど申しましたように、西宮の本宅で横になって養生していないといけない状態でした。そこで、後に三洋電機を創業した井植歳男さんが先頭に立って、リストラをしないといけないということになりました。井植さんは、当時は「店員」と言っていましたが、首を切らなければいけない従業員のリストを作って、大将である松下幸之助さんのところへ持っていき、人員整理を決めてもらおうとしました。

 すると松下幸之助さんは、布団から起きて正座をして、そのリストを受け取りながらしばらくじっと見て、おもむろに涙を流し始めました。この人たちは、松下電気器具製作所を大きくしていくために力を貸してもらおうと採用した人たちであり、自分にとっては非常に大切な社員の人たちである。そういった人たちを会社が不況だからといって首を切るのは忍びない、松下幸之助さんはそう考えていました。しかし、そんなことを言ってもそのままでは会社はつぶれてしまいます。そのため、涙を流している松下幸之助さんを見て、井植さんはあっけにとられ、ぼうぜんとしていたわけです。

 そして、松下幸之助さんが次に何を言ったかといえば、一人も解雇してはいけないし、一銭も給料を下げてはいけない、ということでした。その代わりに、土曜も日曜も返上して、重役であるか技術者であるか総務であるかも問わずに、全員がマーケットに出て倉庫にある製品を売っていくことを命じました。この、一人も首を切ってはいけないし、一円たりとも社員の給料を下げてはいけないということを聞いて、井植さんたちは喜び勇んで会社に戻りました。


●松下幸之助の話に感動した従業員の頑張りで恐慌を乗り越えた


 井植さんたちは、従業員を減らそうと松下幸之助さんのところへ話に言ったけれども、誰一人として首を切ってはいけないし、賃金を一円もカットしてはいけない、大将はそう言っていたと、会社に戻って従業員の人たちに伝えま...

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