●経世済民という考え方
皆さんご存じだと思いますけれども、経営というものを考える際には、「経世済民」という言葉が重要です。
この経世済民とは要するに、世のため人のためということを意味します。つまり、経済というものは民の救済のためにあるという考え方です。松下幸之助さんは別にこれを意識していたわけではないと思いますが、まさに経営をしながら、民を救うことが経済なのだと思います。
●正しく売り買いすることが商売である
これは私の解釈になりますが、松下幸之助さんは、商売というものは「正売(しょうばい)」であり「正買(しょうばい)」であると、こういう考え方をしていたと思います。この言葉は、松下幸之助さん自身が言っていたわけではありませんが、商売とは正売ないし正買であり、正しく売り買いをすることが大事だという考え方です。また、この正売、正買を行うということは、誠実さを意味しています。そして、誠実であることは信用につながるわけです。
松下幸之助さんの経営の仕方はまさに、正しい売り買いをする、誠実な売り買いをする、そういうものでした。要するに商売というものは、信用を築き上げていかなければ成り立たないという考え方をしていました。
このような考え方を、松下幸之助という人は持っていました。そして、この誠実とは、うそをつかない、だまさない、裏切らない、この3つを要素としています。こういうことが、客観的に、あるいは学問的に言えるのかは、分かりません。ですが、松下幸之助さんを見ていると、このような考え方を持っていたと私は思います。
●国民の立場に立つ正しい商売・経営
松下幸之助さんが全くうそをついたことがないかというと、これは私には自信がありません。しかし、私の知る限りでは、うそを言ったことはありません。また、だますということはなかったし、人を裏切るということもなかったのです。私自身も、23年間で裏切られたことは一度もありませんでした。
こういったものが、松下幸之助さんの商売や経営というものの考え方の根底にあったのではないかと、私は思います。いずれにしても、松下幸之助という人は実際に、勝てば官軍という考え方はせず、正しい商売をしていました。
そしてまた、多くの国民の人たちの救済、あるいは国民、消費者の人たちの立場に立ちながら商売や経営をやっていたのが...