生き続ける松下幸之助の経営観
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松下幸之助の「ガラス張りの経営」とは?
生き続ける松下幸之助の経営観(11)松下電器成功の理由3
江口克彦(株式会社江口オフィス代表取締役社長 /元参議院議員/PHP総合研究所元社長)
株式会社江口オフィス代表取締役社長の江口克彦氏が、松下電器が成功した9つの理由のうち7つ目から9つ目の理由を解説する。特に注目したいのは7つ目の「ガラス張りの経営」である。松下幸之助が唱える「ガラス張りの経営」とは何か。(2018年5月31日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「生き続ける松下幸之助の経営観」より、全12話中第11話)
時間:9分25秒
収録日:2018年5月31日
追加日:2018年11月14日
≪全文≫

●成功の理由7:ガラス張りの経営と社員の結束


 成功した7番目の理由として松下幸之助さんが挙げるのは、ガラス張りの経営をしたということです。松下幸之助さんが言うガラス張りの経営とは何か。戦前においては、資本家イコール経営者という場合がほとんどでした。そのような状況下では、これだけ売り上げがあって、これだけ利益があって、在庫はどれほどで、どのくらい借金をしていて、これだけ内部留保がある、そういった数字を社員の人たちに話す必要はありませんでした。むしろ、それをやる経営者は、言ってみれば威厳がないとされていました。

 しかし、松下幸之助さんは、新入社員であっても、男性社員であっても女性社員であっても、社員を300人、400人とみんな集めて、そういったことを報告していました。今でも写真が残っていますが、社員全員を集めて報告していたわけです。

 私は、「よくそんなことをおやりになりましたね」と松下幸之助さんに言ったことがあるのですが、松下さんは、「そら、そうやろう。社員の人たちが一生懸命やってくれた結果を報告するのは社長としての礼儀やろう」と言ったのです。それで私は、「礼儀と言われれば礼儀ですね」と言って笑いました。

 その時に、もう一つ「社員の人たちに数字をいちいち言っていたら、その数字が外に漏れてしまいませんか?」と聞いたのです。すると松下さんは、数字を言った方がかえって漏れないのだと言いました。隠そうとして言わなかったりすると、社員がいろいろと余計に詮索をして、あることないことを外で言ってしまう。先に公表しておけば、逆にみんなが責任感を持って外で言わなくなるというわけです。そういう意味で、松下幸之助さんはガラス張りの経営というものをしたのだと思います。

 これは松下幸之助さんが言ったことではありませんが、このガラス張りの経営によって、「松下幸之助の会社」という意識から「われわれの会社」というものへ、社員の意識が変わったのだと思います。社長ないし経営者、あるいはトップだけが知っていればいい数字を、一社員までもが知っている。そのことによって松下電器では、社員の結束やお互いの信頼感が強かったと言えます。これは多分、松下さんの会社ではなくわれわれの会社であるという意識から、生まれていたのだと思います。


●成功の理由8:全員経営と提案制度


 成功した理由の8番目と...

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