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松下幸之助は派閥を作らせなかった

生き続ける松下幸之助の経営観(10)松下電器成功の理由2

江口克彦
株式会社江口オフィス代表取締役社長
情報・テキスト
株式会社江口オフィス代表取締役社長の江口克彦氏が、松下電器が成功した9つの理由のうち、3つ目から6つ目の理由を解説する。中でも注目は6つ目の理由で、松下幸之助は派閥を作らなかったという。それはいったいなぜか。(2018年5月31日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「生き続ける松下幸之助の経営観」より、全12話中第10話)
時間:12:10
収録日:2018/05/31
追加日:2018/11/14
≪全文≫

●成功の理由3:方針を明確に打ち出したこと


 松下電器が成功した3つ目の理由は、方針を明確に出したことです。方針というと、皆さんは、自分の会社も方針は出していると思うかもしれません。ですが松下幸之助さんは、基本理念プラス具体的目標、そして最終目標、この3つを方針として社員の人たちに示していました。

 うちの社員は出来が悪いと言う人がいますが、それは実は社長や上司の責任なのです。それはどうしてか。社員は、少なくともこの会社で一生懸命働こうと思って、入社してきています。ですから、一生懸命に仕事をします。それなのに働かなくなるとしたら、それは、今言った3つがそろった方針を出していないからです。

 社員は一生懸命に仕事をしろと言えば、そのようにするのです。ですが、自分が思っていたのとは違う結果を出したということで、社長や上司が部下を叱ることがあります。しかしそれは、怒る方が間違っているのです。要するに、一生懸命走れと言えば社員は走るのですが、結果を出させるためにはやはり方向を示す必要があります。

 望んだ結果を出してもらうためには、北なら北に向かって走れと言わなければならない。あるいは、東なら東に向かって走れと言わなければならない。方向を示さずに、ただ走れと言って一生懸命に走らせて、それで部下が戻ってきて報告をしたら、そんな結果を出しては駄目だと言う。それでは、部下のやる気はうせてしまう、それどころか、会社を辞めてしまいます。一生懸命仕事をしろ、走れと言うから一生懸命走ったのに、結果を持っていったら怒られる。これでは、部下から見れば、社長は何を言っているのか分からないということになります。

 明確に方針を出しておけば、社員は走る方向、走るペースが分かるわけで、これは、マラソン選手を考えてみれば分かると思います。要するに、東京オリンピックに出るという最終目標があります。基本理念にあたるのは、こういう練習方法で、こういう気持ちで練習を重ねていこう、ということです。そして具体的な目標としては、5キロのラップタイムや10キロのラップタイムがあります。

 そして、最終目標として銅メダルは取ろうということにすれば、選手は具体的な目標のラップタイムを何回も繰り返して走ることで達成しようとする。一生懸命トレーニングを積み重ねていくことができるようになるのです。

 ですが、基本理念と最終目標と具体的目標、この3つを示さずに、1年後に100億という目標を出している、3年後に23億という目標を出している、そんなことを言っても、それは方針でも何でもありません。


●成功の理由4:理想を掲げたこと


 成功した4つ目の理由を、松下幸之助さんは、理想を掲げたことだと言っています。理想を掲げたとはどういうことか、皆さん、お分かりにならないかもしれませんが、松下幸之助さんは、わずか300人の社員の前で、「250年後にこの松下電器は、1社だけで日本を楽にするような会社になるのだ」と、言ったのです。正直に言って、よくこんな大ぼらを吹いたなと、私などは思うのですが。

 300人というと、それは中小企業の中の下くらいの規模です。その当時に、250年後に松下電器1社だけで日本を楽にするとか、国民を満足させるとか、そういう会社になると言ったのです。ところが、これを掲げたことによって、今はこんなに小さい会社だけれども、250年先にはそんなに大きな会社になるのかと、町工場であった松下電器の従業員たちは夢のように思うのです。250年先というと、従業員たちも生きていないし、松下幸之助さん自身も生きていません。でも、これで結局、社員たちは小さい町工場ながら大きな誇りを持つわけです。

 皆さんの会社もそれぞれ、毎年の方針とか、あるいは3年計画や5年計画といったものを持っているかもしません。ですが、それだけではなくて、100年後にどうするのかとか、せめて50年後に自分たちの会社をこうするのだといった、理想を掲げてもらいたい。それによって、社員はそういった会社になるように努力をするし、それを訴えることが社員に誇りを持たせることにつながります。


●成功の理由5:時代に合った仕事をしたこと


 松下幸之助さんが挙げた5つ目の成功の理由は、電器という仕事がまさに時代に合っていたということです。これについては、私と松下幸之助さんの2人でよく話したものですが、松下さんが電器の仕事をやるようになったのは、大阪で市電が走っているのを見たことがきっかけでした。

 これは、ニュートンによる万有引力の発見の話と同じです。あれは作り話だとも言われていますが、いずれにしてもリンゴが地面に落ちるのはそれまでに何億人もの人が見ているわけで、そこから万有引力に気が付いたのはニュートンだけです。同じように、市電が走っているのは全国の人が...
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