グローバル環境の変化と日本の課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
縮小均衡の悪循環とおひとり様の世界…いま攻めの経営を!
グローバル環境の変化と日本の課題(3)日本経済30年間の悪循環
石黒憲彦(独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長)
「失われた30年」といわれている日本経済だが、実は2001年頃にわずかだが経済成長しており、悪循環から脱却するチャンスはあったのだ。ではなぜそうならなかったのか。日本経済衰退の要因とともに、非正規雇用の定着と出生率の低下など我慢の経営が招いた負の側面を確認しながら、「攻めの経営」に転じる必要性について解説する。(全6話中第3話)
時間:8分10秒
収録日:2025年1月17日
追加日:2025年3月18日
≪全文≫

●日本経済の30年間の悪循環を振り返る


 今からお話しすることがいちばんのメインイシューなのですが、日本経済がやらなければいけないことというと、海外の活力をいかに取り込むかというのがいちばんのポイントだと思っています。

 次のページ(スライド)をお開きいただきまして、「縮小均衡の悪循環」とありますが、この30年間の構造を整理してみたのが左の悪循環の輪です。

 まず我慢の企業経営があって、そこから雇用環境が悪化し、物価が下がるにもかかわらず、将来不安もあって貯蓄率が上がります。それで、国内消費が低迷し、デフレが継続して、期待成長率が低下するというのがこの30年間の縮小均衡の罠です。

 私が今でも思い出すのは2001年頃で、不良債権処理の問題で大騒ぎになったのが1999年~2000年なのですが、2001年ぐらいからは、実は日本経済は1パーセントぐらい成長していたのです。1パーセントぐらいの賃上げはしてもおかしくなかったのです。ところが、その頃からビシッと各社とも賃上げはなしになったというのが、ある意味では25年前の状況だったかなと思うのです。

 なぜそういうことになったのか。でも、そのときには皆さんは不思議に思わなかったのです。その1つの理由は、長期の雇用慣行、終身雇用を守るためには賃上げしている場合ではないという大義名分だったのです。それで、一般のいわゆるサラリーマンたちも、「そうだよな。俺たちの雇用を守るためには賃上げなんか言ってられないよな」というのが、あのときのコンセンサスです。以来、デフレが始まるのです。

 あのときに私は産業政策の担当課長をしていて、グラフを見ていたときも不思議なグラフになってしまうなと思ったのです。2001年から、先ほどいったように1パーセントぐらいの成長はあるのですけれど、2005~2006年ぐらいのときに気がついたのですが、輸出物価は上がらず、輸入物価が上がるのです。

 何をやっていたかというと、日本企業はひたすら合理化なのです。コストカットを行う。それでおそらく大企業、車(産業)でいえば、Tier1、Tier2、Tier3に「値段を下げろ」と迫っていたのです。そういうことの繰り返しなのです。

 それで一方において、付加価値の高い車をつくって売るという攻めのあれ(経営)...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
未来を知るための宇宙開発の歴史(14)宇宙開発は未来をどう変えるか
『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学
川口淳一郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一