●日本経済の30年間の悪循環を振り返る
今からお話しすることがいちばんのメインイシューなのですが、日本経済がやらなければいけないことというと、海外の活力をいかに取り込むかというのがいちばんのポイントだと思っています。
次のページ(スライド)をお開きいただきまして、「縮小均衡の悪循環」とありますが、この30年間の構造を整理してみたのが左の悪循環の輪です。
まず我慢の企業経営があって、そこから雇用環境が悪化し、物価が下がるにもかかわらず、将来不安もあって貯蓄率が上がります。それで、国内消費が低迷し、デフレが継続して、期待成長率が低下するというのがこの30年間の縮小均衡の罠です。
私が今でも思い出すのは2001年頃で、不良債権処理の問題で大騒ぎになったのが1999年~2000年なのですが、2001年ぐらいからは、実は日本経済は1パーセントぐらい成長していたのです。1パーセントぐらいの賃上げはしてもおかしくなかったのです。ところが、その頃からビシッと各社とも賃上げはなしになったというのが、ある意味では25年前の状況だったかなと思うのです。
なぜそういうことになったのか。でも、そのときには皆さんは不思議に思わなかったのです。その1つの理由は、長期の雇用慣行、終身雇用を守るためには賃上げしている場合ではないという大義名分だったのです。それで、一般のいわゆるサラリーマンたちも、「そうだよな。俺たちの雇用を守るためには賃上げなんか言ってられないよな」というのが、あのときのコンセンサスです。以来、デフレが始まるのです。
あのときに私は産業政策の担当課長をしていて、グラフを見ていたときも不思議なグラフになってしまうなと思ったのです。2001年から、先ほどいったように1パーセントぐらいの成長はあるのですけれど、2005~2006年ぐらいのときに気がついたのですが、輸出物価は上がらず、輸入物価が上がるのです。
何をやっていたかというと、日本企業はひたすら合理化なのです。コストカットを行う。それでおそらく大企業、車(産業)でいえば、Tier1、Tier2、Tier3に「値段を下げろ」と迫っていたのです。そういうことの繰り返しなのです。
それで一方において、付加価値の高い車をつくって売るという攻めのあれ(経営)...