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李登輝に影響を与えた「メメント・モリ」の意味

李登輝に学ぶリーダーの神髄(2)「自主自立」と「メメント・モリ」

江口克彦
株式会社江口オフィス代表取締役社長 /元参議院議員/PHP総合研究所元社長
概要・テキスト
中学時代の李登輝
李登輝は13歳の時に「自主自立」に目覚め、家から離れた中学校に入り、自分を向上させようとした。学生時代は、カーライル、ニーチェ、西田幾多郎など西洋や日本の古典を読みあさった。「死を想え」という意味の「メメント・モリ」も、李登輝の考えに影響を与えた。そうした中から政治でも思想でも、「自主自立」が根底思想となった。(全10話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11:03
収録日:2020/08/24
追加日:2020/11/04
≪全文≫

●13歳で周囲からの自立を考える


江口 李登輝さん自身についていえば、お父さん、お母さん、家族から甘やかされて育ちました。ところが13歳の時、「こんなに甘やかされて、いいんだろうか」と思うのです。いわゆる自覚する。「周囲に甘えている」「家族に甘えている」と。その意味ですごい人です。

―― 旧制台湾中学の頃ですか。

江口 13歳ですから、旧制中学だったかもしれません。それで自分で決心して、「親から離れよう」と。このままでは自分がスポイルされると。

―― すごい人ですね。

江口 そういうことを自分で考え、実行するのはすごいと思います。それで、150キロぐらい離れた淡水にある中学に自分で移るのです。自分の自我、自分の気性の激しいところを直さなければいけない。自分で自立し、我慢することを身につけなければいけないと、周囲からの自立を考えるのです。自立して自分の人生を生きることを13歳にして考えるのだから、早熟です。

―― すごいことです。快適な環境だからというのもありますね。

江口 李登輝さんの家は、そこそこ豊かだったんです。いってみれば小金持ちです。

―― 裕福だった。

江口 大裕福ではないけれど、そこでは生活に困らないし、甘やかされる。自分がスポイルされる、ダメになってしまう。そう考えて、そういう行動を起こすのです。

 だから中学に行ったら、トイレ掃除など、いわゆる人が嫌がることをどんどんしていく。それが自分の向上につながると考え、実践していくのです。そういうところが並みの人ではないと思います。


●李登輝と交わしたキャッチボール


江口 やがて高校へ進み、大学は京都大学農学部に行きますが、それまでの間にいわゆる日本や西洋の古典を読みあさっていくのです。例えばトーマス・カーライルの『衣装哲学』とか、フリードリヒ・ニーチェの本とか。日本でいえば倉田百三の『出家とその弟子』、西田幾多郎の『善の研究』とか。

 だから李登輝さんと話していると、博識というか、次から次へ、いろいろ話が出てきます。カール・マルクスも出てくれば、カーライルも出てくる。非常に勉強家というか、とことん突き詰めていく人なのです。

―― すごい人ですね。

江口 李登輝さんの別荘の1階と地下に書庫があり、1万から2万冊ぐらいの本が並んでいました。岩波文庫が全部揃っていたでしょうし、それ以外も日本の古...
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