ヒラリー・クリントン氏の全盛期は、当時夫のクリントン氏が大統領だった2000年代だったという島田氏。当時、ダボス会議での彼女の発言が全米の喝采を浴びたそうだが、およそ10年後、大統領選挙でトランプ氏と対峙した際、彼女の声は労働者層に届かなかった。一方、「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ大統領の姿は、1980年代に半導体問題で日本に難癖をつけたレーガン大統領に重なって見える。(全7話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
≪全文≫
●ダボス会議のヒラリー、全盛期の輝きと冴えたジョーク
―― ヒラリー氏には、(前回までに話した取り残されたりした)体験がなかったわけですね。
島田 あの人には全然ないですね。
―― そうでしょうね。私は上がってきたのだから、上がれないあなたたちが悪いという話になるのですかね。
島田 そうでしょうね。クリントン(大統領)が医療保険プロジェクトをやろうとしたときに、ヒラリー氏は大統領夫人だというので一人で担当しました(後にオバマ氏が達成します)。これでアメリカの名士として有名になったわけですが、私はスイスで、当時のヒラリー氏に目の前で会っています。
―― それはすごい。ダボスですね。
島田 ダボス会議です。そのときに「ヒラリー夫人に聞く」というテーマもあった。アメリカで輝いている人でしたから全員集会で、2000人ぐらいの人が聞いているのですが、出てきたヒラリー氏は非常に迫力がありました。
―― なるほど。
島田 あの人は、本当は目がよくないのですが、コンタクトをして出てきて、こう言いました。司会はクラウス・シュワブ博士で、非常に外交的な表現をする人でした。
“Mrs. Clinton, your medical insurance was a mixed-success, wasn’t it?”
“mixed success”
これは外交的な言い方で、成功とも失敗とも言わない。「ある程度、成功しましたね」と言ったわけですが、ヒラリーはいきなりはっきり“No”と言った。“It was a fatal failure”(とんでもない失敗だった)というのですが、その次がすごい。“because of the gentleman sitting in front of me”と言ったのです。
目の前に誰が座っているかというと、GMの会長などのお歴々が並んでいるわけです。「この人たちが、1ドル1セントも労働者のために費やそうとしないので大失敗しました。残念です。アメリカはその程度の国です」と言ったので驚いた。あのときは世界の人が2000人が聞いていたのですから。
―― それは、すごいですね。
島田 そのときの彼女は目がキラキラしているように感じました。話す英語は、日本の中学生でも分かるような、きれいで明確な表現です。それで、シュワブ博士が国際関係や戦争や財政問題について次々と聞くのですが、紙1枚持たずに立て板に水で、ほんの数分できれいに解いていく。
―― すごいですね。
島田 十何問解いていましたね。私は「すごい女性が...