危機のデモクラシー…公共哲学から考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
齋藤純一(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授)
18世紀後半の大哲学者イマヌエル・カントは、権威主義的だった当時の政治状況に対して「啓蒙」の議論を皮切りに批判を展開した。カントが理想とした、市民がともに考え、それぞれの幸福を追求していくための公共性とはいかなるものか。理性の使用、情報の公開性、パターナリズム批判といったキーワードを挙げながら解説する。(全6話中第3話)
時間:11分43秒
収録日:2024年9月11日
追加日:2025年4月11日
≪全文≫

●啓蒙――他者とともに考えること


 それでは2番目のトピックです。カントの公共性論に入ります。

 18世紀後半の大哲学者で、『純粋理性批判』『実践理性批判』などの著作によって有名ですけれど、それ以外のものも書いています。有名なところでは『永遠平和のために』です。読まれた方はいらっしゃるでしょうか。実は後半部分にとても面白いところがあります。それと『啓蒙とは何か』や『理論と実践』です。

 (彼は、)今ロシアの飛び地になっている軍港カリーニングラードですけれど、当時の東プロイセンのケーニヒスベルクというところで一生を過ごしました。でも、かなりの情報通なのです。1つの港町にいながらさまざまな情報を積極的に入手するわけです。植民地主義批判とか、有名な面白い議論もあるのですが、今日はそのあたりは省いて、公共性に直に関わるところを4点ほどお話ししたいと思います。

 『啓蒙とは何か』というので、なにか上から下の人に向かって、「上から目線で蒙を開いていく」というようなイメージが、どうしても啓蒙というと若干あるかと思います。私もそういうふうに思ってきたのですが、カントは真逆です。「他人の知的な権威に頼らずに、自分で考えること」。これが啓蒙の要求です。ただ、自分自身で考えるということが1人でできるかというとそうではないのだというのが面白いところで、「自分で考えるためには他者とともに考えることが必要だ」ということを強調しました。

 自分が語ったことに対して相手から応答とか、批判が返ってくる。そうやって自分の意見が、主張が正しかったかどうかを改めて吟味していく。こういうやりとりのフィードバックの中で、初めて自分の考えが形成されていくのだというのです。

 そういう意味では、理性は主観的なものではない。間主観的なもので、人と人との間に理性はあるのだということを、ほとんど初めて語った人なのではないかと、私は見ています。そのあたりがドイツの哲学者、ユルゲン・ハーバーマスによって引き継がれていきます。「コミュニケーション的理性」という言葉をハーバーマスは使います。

 自分で考えるためには「Mit-Denken(他者とともに考える)」ということが必要なのだということで、では何をするのかというと、「妨げのない言論の自由が必要だ」ということです。(これは)...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
クーデターの条件~台湾を事例に考える(2)クーデターの成功条件とリスク
軍の配置を見れば分かる!台湾のクーデター対策とは
上杉勇司
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤