危機のデモクラシー…公共哲学から考える
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いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
齋藤純一(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授)
18世紀後半の大哲学者イマヌエル・カントは、権威主義的だった当時の政治状況に対して「啓蒙」の議論を皮切りに批判を展開した。カントが理想とした、市民がともに考え、それぞれの幸福を追求していくための公共性とはいかなるものか。理性の使用、情報の公開性、パターナリズム批判といったキーワードを挙げながら解説する。(全6話中第3話)
時間:11分43秒
収録日:2024年9月11日
追加日:2025年4月11日
≪全文≫

●啓蒙――他者とともに考えること


 それでは2番目のトピックです。カントの公共性論に入ります。

 18世紀後半の大哲学者で、『純粋理性批判』『実践理性批判』などの著作によって有名ですけれど、それ以外のものも書いています。有名なところでは『永遠平和のために』です。読まれた方はいらっしゃるでしょうか。実は後半部分にとても面白いところがあります。それと『啓蒙とは何か』や『理論と実践』です。

 (彼は、)今ロシアの飛び地になっている軍港カリーニングラードですけれど、当時の東プロイセンのケーニヒスベルクというところで一生を過ごしました。でも、かなりの情報通なのです。1つの港町にいながらさまざまな情報を積極的に入手するわけです。植民地主義批判とか、有名な面白い議論もあるのですが、今日はそのあたりは省いて、公共性に直に関わるところを4点ほどお話ししたいと思います。

 『啓蒙とは何か』というので、なにか上から下の人に向かって、「上から目線で蒙を開いていく」というようなイメージが、どうしても啓蒙というと若干あるかと思います。私もそういうふうに思ってきたのですが、カントは真逆です。「他人の知的な権威に頼らずに、自分で考えること」。これが啓蒙の要求です。ただ、自分自身で考えるということが1人でできるかというとそうではないのだというのが面白いところで、「自分で考えるためには他者とともに考えることが必要だ」ということを強調しました。

 自分が語ったことに対して相手から応答とか、批判が返ってくる。そうやって自分の意見が、主張が正しかったかどうかを改めて吟味していく。こういうやりとりのフィードバックの中で、初めて自分の考えが形成されていくのだというのです。

 そういう意味では、理性は主観的なものではない。間主観的なもので、人と人との間に理性はあるのだということを、ほとんど初めて語った人なのではないかと、私は見ています。そのあたりがドイツの哲学者、ユルゲン・ハーバーマスによって引き継がれていきます。「コミュニケーション的理性」という言葉をハーバーマスは使います。

 自分で考えるためには「Mit-Denken(他者とともに考える)」ということが必要なのだということで、では何をするのかというと、「妨げのない言論の自由が必要だ」ということです。(これは)...

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