哲学から考える日本の課題~正しさとは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カントと『論語』の対立を超えたところで正しさを議論する
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(6)正しさの基準
特定の物事が「正しい」ものだったかどうかを判断するためには、その行為への評価にとどまらず、より広いコンテクスト(文脈)から考えなければならない。つまり、文脈によって「正しさ」の内容は変わるものである。(2019年10月26日開催・テンミニッツTV講演会「西洋哲学と東洋哲学から考える日本の課題」より全11話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:6分29秒
収録日:2019年10月26日
追加日:2020年3月16日
≪全文≫

●正義の内実を本質的な問題から考える


―― 少し角度を変えてご質問したいと思います。「正しい」ということが人に結びつく場合、立場によってはあえて「正しくない」ことをしなければならない可能性もあるのではないでしょうか。

 例えば、政治家や外交官のようなタイプであれば、マキャヴェリではないですが、賄賂を渡してさえ資源を取らなければいけないかもしれませんし、多少ブラフ的なことをかませて、相手とうまく渡り合わなければいけないかもしれません。ただし、それが「正しい」かどうかについては、どう考えればいいのでしょうか。さらに、それが人のことである場合、各行為について、どう見ればいいのでしょうか。

納富 まさに今おっしゃったような問題において、「正しい」ということを具体的に考える場合、特に1個1個について抽象論で考察しなければならないと思います。1ついえるのは、個々の行為として取り出すと、「これは正しいか、正しくないか」といったような問題になってしまうということです。しかし実際には、もう少し文脈が大きいのです。

 つまり、「正しい」人が「正しい」ことをしているというあり方において、別に「目的が手段を正当化する」というようなつまらないことを言うつもりはないのですが、「全体」という意味での総体的な問題のなかで、大きい・小さいとか、重要である・重要でないとか、あるいはこれは外してはいけないよね、みたいな問題はたぶん決まってくると思うんです。

 「ここを外したら、やはり社会が社会として終わっちゃうよね」とか、政治でいえば、「ここはやはり外してはいけないよね」とか、人のあり方として「これはやっぱり絶対、踏み止まらなくてはいけないよね」というような議論のなかで出てくる正義の話と、もう少し小さな問題(「小さな」といっては失礼ですけれども)を一緒くたにしてはならないということです。人間である以上、ちょっと失敗してしまったり、場合によっては必要悪のような問題もあります。それらを一緒くたにしてしまい、小さな失敗をしてしまっただけで「こいつは悪いことをしたんだから犯罪者」というように考える発想法自体は、「良い人」「良いあり方」という議論からすると、比較的避けられるのではないかという気がします。

 このように考えると、何が重要な問題かと見極めるのは非常に重要です。つまり、正義とはどのぐら...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男