哲学から考える日本の課題~正しさとは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ポピュリズム化する社会で「正しさ」をどう考えるべきか
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(7)ポピュリズムと言葉の問題
哲学と生き方
今日のポピュリズム的潮流に対して、古代哲学の「正しさ」の観念はいかに示唆を与えてくれるのか。ポイントとなるのは、「正しさ」が原理原則によって判断される法廷的なイメージではなく、文脈依存的な「正しい人」に向かうプロセスとして構成されているということである。(2019年10月26日開催・テンミニッツTV講演会「西洋哲学と東洋哲学から考える日本の課題」より全11話中第7話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分23秒
収録日:2019年10月26日
追加日:2020年3月23日
≪全文≫

●カントはなぜ嘘をついてはいけないと考えるのか


―― 「正しい」というのは、行為なのか人なのかということが、今回の講演会における1つの論点であったと思います。イメージ論だけでお話しするのは恥ずかしいのですが、人として「正しい」かどうかが問題となった場合、100パーセントそれに当てはまる人になるのは、おそらく難しいだろうと思います。8割良くても、例えば異性に対しては少し甘いとか、お金に対してはルーズだとか、そういう欠点はあり得ます。また、あの人は7割正しいし、正しい人を目指してやっているから良いのではないか、もう少し成長を見てあげよう、という考えもあり得ます。

 片や現代社会を見ると、政治家やスポーツ団体の、少し強面のトップの方に対して、マスコミの方々があえていやらしい質問を重ね、失言を誘うシーンがよく見られます。その失言だけを取り上げて、結果的に貶めることになったり、ということもあります。ドナルド・トランプ大統領のツイッターでの発言に対する反応も、それに近いようなところがあるような気がします。

 こうしたことから考えると、人が「正しい」ということと、行為が「正しい」ということの間には、かなり大きな差があるような気がします。現在の日本では、特にポピュリズム的、あるいは道徳的にレッテルを貼って、〇×(マルバツ)を付けてしまうような社会になりつつあるように感じます。そうした状況に対して、古代的といいますか、そうした「正しい人」という観念をどのように生かしていくことができるのでしょうか。

納富 その前に少しだけ、中島さんが前回言った「カントがなぜ嘘をついてはいけないと考えたのか」についてお話しします。これは非常に重要な問題だと思うのです。

 「嘘つきのパラドックス」をご存じでしょうか。「私は今、嘘をついています」と言った場合、その発言(「私は今、嘘をついています」という発言)が本当であれば、そのこと自体(嘘をついているということ)が嘘になり(つまり、嘘をついていないということ)、もしその発言(「私は今、嘘をついています」という発言)が嘘であれば、そのこと自体(嘘をついているということ)が本当(つまり、嘘をついているということ)になります。これは、ジョークとして受け入れられる場合には特に問題になりません。しかし、人間は言葉を使っている以上、言葉を信頼しなければなり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治