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日本人の価値観は何によって形成されているのか

哲学から考える日本の課題(8)質疑応答編1:宗教と道徳

情報・テキスト
日本は宗教性が薄いと思われがちだが、実際には戦前から日本における重要な要素として、宗教は位置付けられてきた。それを含め、「日本人の価値観が何によって形成されているのか」というのは大きな問いである。(2019年10月26日開催・テンミニッツTV講演会「西洋哲学と東洋哲学から考える日本の課題」より全11話中第8話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:23
収録日:2019/10/26
追加日:2020/03/30
キーワード:
≪全文≫

●日本人の価値観は何によって形成されているのか


―― 今回の講演会でのお話に基づいて、これから皆さまからいただいた質問に、両先生にお答えいただきたいと思います。まず1つ目の質問です。

「わが国についていえば、民主主義は別として他国と比較すると道徳については、まだ悲観するような状況にはないように思います。宗教そのものが色濃く社会に影響を与えていないなかで、日本人の価値観は何によって形成されているのでしょうか」

 これについて、いかがでしょうか。

中島 ご質問ありがとうございます。道徳と宗教、そして民主主義という言葉が出てきました。道徳と宗教は非常に大きな言葉なので、このご質問に答えるのはなかなか難しいなと思っています。しかし、日本に宗教性がないというのは、私は少し行きすぎた意見かなと思います。20世紀前半までの日本を外から見ていた人たちは、「なんて宗教的な国だろう」と思っていたわけです。その後、少し極端なことが生じていたので、そうした宗教性をなんとか見直していくという発想で戦後はスタートしました。よって、「日本は無宗教だよね」という考えが強く出てきたのは、戦後になってからです。

 ですから、日本のなかには宗教がある程度残っていると私は考えています。だからこそ、変な仕方でそれが噴出することがあります。かつてオウム真理教に関することはその典型的な事件でした。あのようなカルト的なものに形を変えて、宗教が現れることはありますので、それには注意をしなければいけないと思います。


●宗教と道徳は切り離して論じることができない


中島 道徳に関しては、今回の講演会で「正しい人」の話をしたので、無縁だったということはないと思いますが、ただし、言葉として道徳が強く登場してきた背景には、ヨーロッパにおいてキリスト教が退いていった後に規範をどうしようかという問題があったと思います。世俗化が進んだので、宗教で全てを意味づけることは難しくなる。そこで、神さまに頼らずに、人間としてなんとかしよう、ということになり、そこで出てきたのが道徳だったと思うのです。ですから、ある意味で道徳と宗教はセットです。宗教と道徳は、切り離して論じることができないと思います。

 ご質問では、「日本では道徳はまだマシだ」というご意見がありました。しかし、そうした比較をしてもしょうがないかな、と私は思います。それぞれの国がそれぞれのあり方で、道徳についてそれなりに探求しており、日本でも議論がなされています。ただそのなかでは、道徳を教科化して教えなきゃいけないということになっているぐらいですから、日本の状況も変わってきていると思います。その上で、日本人の価値観が何によって形成されているのかというのは、大きな問いです。


●ジグザグとした宗教や道徳を考えるなかで形成されてきた日本人の価値観


中島 もちろん今申し上げたように、宗教も道徳も歴史を持っています。これを無視してはなりません。歴史を排除して、抽象的に宗教や道徳を語っても、あまり良い議論にはなりません。おそらく日本人の価値観も、そうしたジグザグとした宗教や道徳というものを考えるなかで形成されてきたと思いますし、これからも形成されていくでしょう。

 では江戸時代の人が今の私たちを見て、「あ、この人たちは日本的な道徳を持っているね」と言うかというと、それは言わないと思いますし、想像もつかないでしょう。きっと「あ、きみたちは誰だね?」と言うんじゃないかと私は思っています。ですから、日本という何か本質があり、それが平安時代や江戸時代からずっと変わらず続いてきたと考えないほうが良いでしょう。

 しかし、やはり日本語を使い、歴史をある仕方で継承している、そうした場所としての「日本」は考えられます。そのなかで、場合によっては中国やヨーロッパ、ギリシャなどいろいろなものを参照することもあるでしょう。日本人の価値観というものがもしあるとすれば、そうした目配りを幅広くやっていくことによって、それが良い方向につくられていくと思います。

―― ありがとうございます。


●「一神教と多神教は違うという議論」から導かれる結論の無意味さ


納富 中島さんにお答えいただいたことと、そんなに大きく違いませんが、この最初のご質問だけでなく、おそらく今日は時間がなくて取り上げられないご質問でも、やはり宗教という問題に関心がある方は多いのではないかと思います。大学で教えているとつよく感じるのですが、「宗教」という言葉が出てきた段階で、今の学生はすぐにメンタルブロックがかかってしまうようです。「宗教」といえば即アウトというような教育がどうやらなされていたようです。こうした流れには、逆に警戒しなくてはいけないなと思っています。

 「宗教」の定義は...
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