江戸とローマ~娼婦と遊女
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お妾さん文化、不倫騒動…時代で変わる価値観の多様性
江戸とローマ~娼婦と遊女(4)変化する価値観と遊女文化
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
明治以降、ヨーロッパのキリスト教文化の影響を受けてきた日本人は、そうした近代の価値観に基づいて吉原についても批判する。だが、歴史的な事象は、同時代の価値観、あるいはその地域の価値観に基づいて考えてみるべきものではないだろうか。現代の日本社会を騒がせる不倫問題への批判も、価値観の多様性を考える上で、鍵となる一つのテーマといえるかもしれない。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:6分26秒
収録日:2021年8月20日
追加日:2023年5月8日
≪全文≫

●強まる西洋的な価値観と変遷し衰えた吉原文化


―― 現代の日本人が江戸時代の、例えば吉原の文化を見るときに、(その見方は)どうしても明治以降のヨーロッパのキリスト教による影響(がぬぐえない)。イギリスのビクトリア朝道徳というか、そういうフィルターを一回くぐった後で見ている。それはヨーロッパ人と同じ見方ではないのでしょうが、江戸人と同じ見方は、もはやできなくなっているということがあると思います。

 そのあたり、当時に帰って当時の価値観で考えてみる、そうした価値観の多様性をどう捉えるかというのは、先生がおっしゃったように、今後非常に大きなテーマになってくると思います。

本村 そうですね。日本は、明治以降ヨーロッパの影響を受けてきましたが、結局現在に至るまで人口の1パーセントもクリスチャンにならなかったという経緯があります。そういう意味では、キリスト教的な価値観をみんなが身につけているわけではありません。

 しかし、近代になるといろいろな意味で、近代思想の中にはキリスト教的なものが入り込んでいます。だから、直接宗教的な意味ではなくても、キリスト教的な考え方の洗礼を明治以降の日本人は非常に受けているということはある。そういう目で見ると、日本人は今かえって江戸時代のことなどを素直に見られないような立場になっている。それは、おっしゃる通りだと思います。

―― 吉原自体が(経済的に)厳しくなってしまって、かつてのように車1台分のお金をかけるような世界でなくなったこともあるのでしょうが、幕末から明治以降になってくると、だんだん先ほど申し上げた「苦界」色が濃くなります。現実問題として、遊女の人々が大変な状況に追い込まれることも多くなり、そういう色彩が強くなるわけです。これも、ある意味では、文化や道徳が変わっていったことによる一つの結果ということになるかもしれませんね。

本村 そうですね。やはり、どうしても西洋的な価値観が強くなってきたので、完全にそうだと思います。もちろん昭和30年ぐらいまでは「赤線」という公認された形で残っていきはします。でも、それは「遊女文化」というようなものではなく、本当に人類史の中で普遍的にあるような、ごく小規模な形のものになったのではないかと思います。


●価値観の時代性と不倫騒動


―― そういう意味ではまさに文化と一緒で、特にこのジャンルと...

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