江戸とローマ~娼婦と遊女
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
花魁は日本独特――洗練された吉原の遊女文化
江戸とローマ~娼婦と遊女(2)遊女の「道」と吉原の文化
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
江戸の遊郭・吉原において、花魁はトップスターである。遊女たちの住む吉原は厳然たる秩序がある一方、女性や子どもが訪れるエンタメ・スポットでもあったという。ここで育まれた遊女文化は日本独特ともいえる遊女の「道」を究めるものであり、ローマをはじめ前近代のどの社会にも、そのような文化は生じなかったようだ。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分51秒
収録日:2021年8月20日
追加日:2023年4月24日
≪全文≫

●商人にも遊女にも「道」がある


―― (前回)日本における士農工商ということばがありましたが、日本の場合さらに独特なものに、例えば石田梅岩の開いた「心学」があります。これは商人にも「商人道(商いの道)」を説くわけで、要するにみんな道にしてしまう。武士は武士道、農民は農民道(百姓道)、商人の場合は商道ということで、それに向かって一生懸命(活動して)社会的に利益をもたらしていくのはいいことだという独特の「道」の観念を日本人は発想していきました。

 今回のお話でいうと、遊女の世界においても「道」的なものがあり、その社会にはその社会なりの秩序がある。トップスターから下位の人までいる中で、それぞれの秩序ができてくるというのは、非常に独特な社会構造になっていたのかという気がするのですが、ここはローマと比較すると、どうでしょうか。

本村 そういうふうに言われてみると、確かに日本は武士道であったり商人道であったりという方向に持っていく。何か一本筋の通った面があって、いろいろな例を挙げることができるし、野球選手だってイチローや大谷を見ていると、やはりどこかそういうところがあるのではないかという(笑)。

―― 職人的に突き詰める(ということでしょうか)。

本村 うん。体力面で言うと、あれぐらいの人はメジャーリーグの中で他にもいっぱいいるはずです。その中で、なぜイチローや大谷が突出した存在になるのか。何かその原因が、日本の中にあるのではないかという気が確かにします。

 だから、ローマとの比較といわれますが、ローマには、何度も言ったように「父祖の遺風」というものがあり、祖先の行いを大事にして、それに負けないようにするということは確かにありました。しかし、農民は農民としての道を究めるというような意識は、ローマに限らず、前近代社会全体にあまりないのではないかという気がします。


●花魁が文化をリードした吉原の独特な洗練


―― 日本独特の面白さとして、先生のおっしゃる「遊び」をも含めて文化にしていくところがあるような気がしております。例えば遊女の世界でいうと、日本では「吉原」が一番中心になる場所かと思います。その吉原は、いわゆる公認された場所として存在していますが、その中で独特な文化が培われてきます。このあたりの文化性については、どのようにお考えですか。

本村 文化性という...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治