「今、ここ」からの飛躍のための教養
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ「知っている」だけでは「教養」とはいえないのか
「今、ここ」からの飛躍のための教養(2)日本の教養離れと知の構造化
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
日本で教養離れが起こった理由の一つに、いわゆる「教養人」の姿勢があった。世間から遊離して机上の空論をもて遊ぶのではなく、知を活用する人になるためには、広い興味を持って知識を集め、それを構造化する必要がある。そして自分なりの意見・疑問を持つと、未知な部分への興味はより広がっていく。(全2話中第2話)
時間:9分21秒
収録日:2022年4月21日
追加日:2022年6月1日
≪全文≫

●日本の教養離れと「教養人」のあり方


 リベラルアーツは、古代ギリシャの哲学を習得する基礎で、法学や神学ではない、哲学の元になる7つの基本だといわれています。それはそうだと思います。

 一方、テンミニッツTVが編集した『現代のリベラルアーツとは何か』(イマジニア)という本では、「よりよく生きるための『知の力』」という副題がついています。「この情報爆発の時代、めまぐるしく社会状況が変化する時代に『よりよく生きるため』には、教養的な知が必要であり、それは武器になる」と書いてあります。これもそうだと思います。

 では、1990年代以降の日本の教養に対する批判的反応というものは何だったのでしょう。多分、そういう教養は「すぐには役に立たず、即戦力にならない。だから、もっと役に立つことに集中しましょう」といわれていました。教養学部などが廃止になった大きな理由は、そこだったと思います。結構、近視眼的な見方です。

 しかし、一方で教養のある人、教養学部の先生たちのような、いわゆる「教養人」が明治以来日本でどのように描かれてきたか。結構ペダンティック(衒学的)で、普通の人が気づかない観点からものを批評することはできるかもしれないし、多分しているのでしょうが、それはたいてい机上の空論による批評で、それに終わってしまうから、それは自己満足であり、本当に彼らが解決したことはないのではないか。という批判が多かったと思います。

「即、金にならないからいけない」というのは、私にとっては論外で、学問に対する理解もリスペクトもない意見だと思います。しかし、明治以来のいわゆる教養人が世間から遊離していたというのは確かに事実の部分があり、これは問題だと思います。


●興味を広げ、知を構造化する


 私の考えですが、広くいろいろなことをある程度知っている必要があります。これは弾込め(たまごめ)といいますか、(自分から)出してくるものを考える材料としてたくさん持っていないといけないでしょうという意味で、まず広い興味が必要です。

 広く世界に対して興味がないといけなくて、その興味に従って、いろいろなものを読んでみたり、人と話してみたりする。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎