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正解なき時代に重要な「問いを考えて答えを見つける」発想

いま求められる「教養」とは(1)武器としての教養

情報・テキスト
ネット検索であらゆる情報がすぐ手に入る今ほど「教養」が必要な時代はない、と識者は口をそろえる。ただし、教養の在り方や中身は従来と様変わりしている。第1話では、そもそも教養とは何か、また、何を目指すことだったのかを明らかにしていく。(全4話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:11:17
収録日:2019/07/10
追加日:2019/09/16
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≪全文≫

●「そもそも教養とは何か」を考える


―― 「そもそも教養とは何か」っていう感じで、ラテン語で表すことと、ドイツ語で言っていることと、英語で言うのって全然違いますよね。そのあと、リベラルアーツと言ってみたり、ジェネラル・エデュケーションと言ってみたり、ビルドゥング(Bildung)と言ってみたり。そのあたりから入っていただいてもよろしいでしょうか。

柳川 そうですね。この本(『東大教授が考えるあたらしい教養』幻冬舎新書)は共著者の藤垣先生が教養学部の先生で、やっぱり教養学部の中で、教養ってどのようなもので、何を教えるべきか、っていうのはかなりいろんな議論があって、その中で、今のカリキュラムが出てきているので、このあたりは、藤垣先生のご知見を随分教えていただいて、一緒に議論をして、ということだったんです。いわゆる良く知られている話だと、リベラルアーツということが割と言われていて、このときに「リベラルアーツって何?」、っていうのはなかなか分からないですよね。


●今の日本にとって重要な教養の三つの定義


―― 人によって定義が全然違う、と。

柳川 そうなんですよね。やっぱり一つのポイントは、思考とか発想を自由にする、ということだと言われていて、どうしても何かを考えていたり、ずっと仕事をしていると、思考が固定化するじゃないですか。固定化したことで、集中していい部分もあるんだけれども、環境が変わったり、新しいものを生み出していかないといけないとすると、もうちょっと柔軟で自由な発想が必要だ、と。結局リベラルアーツというのは、「自由な発想を引き出すための、教養なんだ」、という位置づけが一つあって、こういう考え方をもとに、カリキュラムを作られてきた部分があるっていうのが一つですね。

柳川 もう一つは、「ビルドゥング」といドイツ系のところから来たもので、英語でいう「ビルディング」に近いですかね。「組み立てていく」、「積み上げていく」、ということで、この中の話っていうのは、断片化した知識ではなくて、「これを総合的に組み合わせて全体を高めていく」、という僕なりにそういうイメージをもっているのですよね。

 今って知識だとか、自分の分野というのはすごく細分化されてしまって、細分化されると結局バラバラになってしまって、何か大きなことが起こったときに、それぞれがパーツ・パーツは見ているんだけど、大きなビジョンは描けない。やっぱりこういうことは避けなければならない、ということで、大きな全体体系を創り上げる、という力を養えるんだ、というのが、「ビルドゥング」に込められた思い、発想だ、という理解なんですよね。

 さらにもう一つは、「ジェネラル・エデュケーション」っていわれるものです。もうちょっと一般的な話ですけど、「たくさんの知識をいっぱい頭の中に入れればいい」ということではなくて、「幅広い情報を得ることで、今のさまざまな捉われている状況から自らを解放する」みたいなことが趣旨なんだ、っていう話を伺っていて、ある意味この三つの定義は、それぞれ今の日本が置かれている状況にとって重要なことなのかな、と。

 どうしても固定化して細分化された発想の中でいろんなことを考えているのを、もう少し自由にして、バラバラになっているものを統合化して、より良い方向に持っていく。そのためのツール・武器というのが教養なんだ、というのがわれわれが最初にセットアップした発想だったんですけどね。


●「正解のない問いを考える」という発想が極めて重要


―― 武器としてのリベラルアーツにしないと、アクセサリーとしての学問をやっていると、たこつぼになるだけですよね。

柳川 そうなんですよね。特に今は、いろんな意味で環境変化が激しい時代だと思っています。技術革新もそうですし、例えば世界の政治的状況を見ても、10年前とか15年前とは全く違うものが現れているし、これからも現れてくるだろうと。そうすると、今までの発想の延長線上に解決策があるということではなくて、新しい世界には新しい解決策や発想が必要だ、と。「そういうものをどうやって養っていくのか」、ということが求められている。そういうことだと思うんですよね。

―― あれですよね。正解のない時代の勉強の仕方って全然違ってきますよね。戦後の日本はキャッチアップモデルで極めて楽だったけど、日本自体が一番最初に、三分の一くらいの人口になる社会、これだけの早さで高齢化が進む社会って初めてですから。そういう意味で必要なのは、自分たちでものを考えること。それは先生のおっしゃった、まず一番最初に思考方法として、「なぜ」「なぜ」「なぜ」って根源を問うことですよね。

柳川 おっしゃっていたような、「正解のないことを考えて、答えを見つけていく」、という発想という...
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