「今、ここ」からの飛躍のための教養
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
一市民として「自分で考える人間」を育てる基礎が教養
「今、ここ」からの飛躍のための教養(1)4つの「限界」と「知の体系」を知る
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
「教養とは何か」を知るには、教養小説を読めばいいのだろうか。日本では1990年代以降、「教養部廃止」の議論が頻出したが、「教養とは何か」について議論し始めると収拾がつかなくなり、多くの大学で教養学部が廃止となってしまった。一方、リベラルアーツを核とするアメリカのイェール大学では、リベラルアーツ(教養)について人類が集積してきた「知の体系」として明快に整理され、その目的までもがしっかりと明記されている。(全2話中第1話)
時間:7分49秒
収録日:2022年4月21日
追加日:2022年5月25日
≪全文≫

●教養があるとは、いろいろなことをたくさん知っていることなのか


 総合研究大学院大学の長谷川です。

 教養とは何だろうか。これは非常に大きな話題です。「教養とは何か」についての専門家など多分いないと思いますが、私も専門家ではありません。

 ただ、「教養小説」という言葉があります。ほとんどは男の子を主人公にして、子どもが成長して一人前の大人になっていくまでの苦労なり青春の蹉跌というようなことを描いた小説で、これらは「教養小説」と呼ばれることがあります。

 私が一番好きなのは、サマセット・モームの『人間の絆』という話です。あれはずいぶん一所懸命読んで、何度も泣いたり笑ったりしました。ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』などもその類でしょう。

 だけど、今日私が取り上げたいのは、斉藤洋さんという方が書いた『ルドルフとイッパイアッテナ』という絵本です。ご存じでしょうか。のら猫仲間の猫たちがしゃべる話です。飼い猫だったルドルフがのらになって、いろいろな体験をする中、イッパイアッテナというのら猫のボスに出会い、お友だちになります。それによって成長していくので、この絵本も教養小説の一つです。

 イッパイアッテナというボスは大変教養のある猫です。のら猫仲間の一匹が、あるメス猫に恋心を抱いているらしいと勘ぐっていたルドルフは、「教養のある猫というのは、そういうことは聞かないものだよ」とイッパイアッテナに言われてしまいます。

 教養があるというのは、いろいろなことをたくさん知っているということでしょうか。もし、そうだとすれば、どうして友だちの恋心について聞かないことが教養のあることになるのだろうか、ということを少し考えたりしました。


●リベラルアーツとは限界から解放されること


 東京大学の教養学部で学部長をされていた石井洋二郎先生は、リベラルアーツ(教養)についての考察を重ねた方です。藤垣裕子氏との共著で書かれた『大人になるためのリベラルアーツ』(東京大学出版会)の中で、いいことをたくさん言われています。

 まず、教養はいろいろなことを知っているだけではない。それから、リベラルアーツの「リベラル(liberal)」は「リベレート(liberate)」と同じ語源なの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦