宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
カムパネルラは消えたのか…ブルカニロ博士との対話の意味
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(3)ブルカニロ博士と法華経の世界観
鎌田東二(京都大学名誉教授)
「永久の未完成これ完成である」という言葉通り、宮沢賢治は自作の推敲を繰り返した。『銀河鉄道の夜』では4次にわたる大幅な加筆訂正削除がなされている。決定稿となった第4次稿で消え去った謎の人物に、「ブルカニロ博士」がいる。「セロのような声」のそのひとの登場するシーンを再読することで、賢治が込めた法華経の思想、その世界観への理解を深めたい。(全6話中第3話:2022年7月28日開催ウェビナー〈宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分52秒
収録日:2022年7月28日
追加日:2023年3月20日
≪全文≫

●カットされた謎の人物「ブルカニロ博士」の登場シーン


―― 「ほんとうの幸い」とは何かということを考えていく上で、一つのヒントになるのが「ブルカニロ博士」という人ですね。

鎌田 そうですね、謎の人物ですね。「セロのような声」だと。

―― これは、先ほど先生がいわれた天沢退二郎氏らの校訂ではカットされてしまった部分になります。

鎌田 最終形ではね。

―― 最終形ではカットされたと考えられている箇所になります。ただ、今でも流通している岩波文庫版や角川文庫版などの本では、この部分が残っていたりします。

鎌田 例えば、1951年版など1950~60年代に出た本では、ブルカニロ博士が出てくる文庫本などがあるということですね。

―― そうです。

鎌田 それで読んでいる方もいらっしゃるはずですね。

―― ええ。ただ、まったくそういうところがあることを知らないという方も多いと思います。私などは最初に「セロのような声」が出てくるバージョンで読んだものですから、どうしてもそれがないとさみしいですね。

鎌田 確かに、あのセロの声というのは印象深いですね。

―― 印象深い。それに、ここは禅問答のように謎めいた問いかけのシーンになります。これがもともとはどういうシーンのあたりに入っていたのかというと、まさにカムパネルラとの最後のシーンのあたりです。

 みんながいなくなってしまい、「僕たち、どこまでもどこまでもいっしょに行こう」と言った後で、ジョバンニがカムパネルラに「けれどもほんとうのさいわいはいったいなんだろう」と訊き、カムパネルラは「僕わからない」と答える。そういう問答をしている間にカムパネルラが急にいなくなって、ジョバンニは慟哭する。そうすると、次のシーンに来るわけです。これが、ブルカニロ博士または「セロのような声」の「そのひと」というところになってきます。

 原稿のほうでいうと、見づらい字ではあるのですが、真ん中あたりに「卍」があります。この前のところはジョバンニが泣くシーンで、ここに「挿入をしてください」という印にしているのが「卍」です。挿入する原稿として宮沢賢治が書いたのが、次のものになります。

 ここは右上に「卍」があり、これを入れる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎

人気の講義ランキングTOP10
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
編集部ラジオ2026(8)10分解説!第二の人生の仕事革命
年金の「働き損」解消時代!第二の人生を充実させる方法とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(6)自由は大切だが叡智が必要
弱者を抑圧する自由より、叡智によって制約される自由を!
賴住光子
『孫子』を読む:地形篇(3)逆命利君の教えと絶対的勝利の条件
逆命利君か従命病君か――漢の時代から伝わる重要な戦略論
田口佳史
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博