●『法華経』の五つの特質
鎌田 専門家でもない私が、「如来寿量品(にょらいじゅりょうぼん)」をやる。大変なことですねえ、時代状況はねえ。
―― 「如来寿量品」というのは非常によく聞くもので、私などもよく親族の法事で…。
鎌田 天台宗だとねえ。
―― 天台宗なものですから、読んだりすることもあります。ご葬儀や法事のときに「如来寿量品」をお読みになる方は結構いらっしゃると思いますが、そもそも『法華経』の中において、「如来寿量品」はどういう位置づけになるのでしょうか。
鎌田 今、スライドを出します。鳩摩羅什(くまらじゅう)訳の『法華経』28品は、前半14品が「迹門(しゃくもん)」、後半14品が「本門(ほんもん)」というように大きく分かれていると、今まで教学的に、伝統的に釈義されてきました。
第1「序品(じょほん)」、「方便品(ほうべんぽん)」、「譬喩品(ひゆほん)」、「信解品(しんげほん)」、「薬草喩品(やくそうゆほん)」、「授記品(じゅきほん)」。それから、未来には仏になるという「化城喩品(けじょうゆほん)」。そして「五百弟子受記品(ごひゃくでしじゅきほん)」。この「受記品」も、未来仏になるということの予言書なのです。(さらに)「授学無学人記品(じゅがくむがくにんきほん)」、「法師品(ほっしほん)」、「見宝塔品(けんほうとうほん)」。多宝塔という建築がありますが、不朽の浄土世界というのは、そのように表現されます。「提婆達多品(だいばだったほん)」、これはお釈迦さまの悟りと緊張関係を持ったといわれるものです。(そして)「勧持品(かんじほん)」、「安楽行品(あんらくぎょうほん)」。以上が前半の迹門です。
後半になると、地中から菩薩がワーッと噴出してくる。火山の噴火のように菩薩群が出現してくるところから、いよいよ『法華経』の真髄に入ります。前半では、いろいろな「方便品」や「授記品」で、「仏が出てきますよ」とずっと未来予言がなされてきた。いよいよそれらが、ガンガン展開するのが本門です。まさに具体的なスペクタクルな展開、ダイナミックな展開がストーリーテリングされていきます。
その幕開けが第15「従地湧出品(じゅうじゆじゅっほん)」です。「地湧出品」ですから、土地の中から湧いて出てくる。その後に第16「如来寿量品」があって、...