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アウトサイダーな乞食僧だった空海、なぜ密教の頂点へ?

空海と詩(1)空海の半生と詩的感性で開く密教世界

鎌田東二
京都大学名誉教授
概要・テキスト
空海
出典:Wikimedia Commons
真言宗の開祖にして日本三筆のひとりである空海を「詩人」として理解していくのが、本講義の要訣である。鎌田東二氏によると、密教は詩的な感覚をフルに活用した宗教であり、詩が分からなければ密教は分からないという。最初は空海の前半生から、たぐいまれなる詩的感性によって、密教の扉をどんどん開いていった入唐時代を振り返る。(全7話中第1話)
時間:14:31
収録日:2024/08/26
追加日:2024/11/02
キーワード:
≪全文≫

●詩が分からなければ密教は分からない


―― 皆様、こんにちは。

鎌田 こんにちは。

―― 本日は鎌田東二先生に、空海についての講義をいただきたいと思います。先生、今回は特に空海が詩人であるということで、詩を通じて見ていくと、空海の思想も非常によく伝わってくるという主旨でございますね。

鎌田 「空海」という名称そのものが、宇宙との交感、交信、交流といったことを映し出しているような名前ですよね。「空と海」ですから。

―― そうですね。

鎌田 この空と海に分け入っていく感性というのは、密教自体が持っているものです。密教的感性というのは、秘密の世界や神秘の世界に入っていくもので、そういう感覚や感性は非常に芸術家的な感性です。だから…。

―― 密教と感性というのは、切っても切れないものですか。

鎌田 はい。感覚をフルに活用したのが密教です。(彼は)その感覚の中でも言語の感覚を用いて「真言宗」をつくっていきます。では、真言宗の「真言」の感覚や世界は何によって研ぎ澄まされるのかというと、その一番核心のところに、いわゆる詩作、詩というものの感受があると思います。

―― やはり詩、いわゆるポエムのイマジネーションといった部分が非常に重要になってくるというところでしょうか。

鎌田 極めて重要だし、詩が分からなかったら密教は分からないと思います。イスラム神秘主義の世界でも、優れた神秘家はやはりほぼ詩人です。

―― なるほど。

鎌田 詩人と神秘家というのは非常に裏腹で、裏表のような関係にある。空海は神秘家であると同時に、たぐいまれなる詩人である。そこのところを浮き彫りにできれば、というのが今回の狙いです。

―― ありがとうございます。


●密教の扉を、たぐいまれなる詩的感性で開ける空海


―― まず、そのお話に入る前提として、空海という方がどのような方かというところから伺います。

鎌田 空海は西暦774年に生まれています。どこで生まれたかについては、諸説ある。今までは讃岐国の善通寺といわれてきましたが、最近は摂津国で生まれたという説もあります。

 いずれにせよ、(遣唐使として入唐した翌年の)805(延暦24)年に唐の都に行き、長安の青龍寺の恵果阿闍梨か...
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