【入門】日本仏教の名僧・名著~空海編
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空海と最澄の関係に大きな影響を与えた「密教」の位置づけ
【入門】日本仏教の名僧・名著~空海編(1)空海と最澄
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
弘法大師としても知られる空海は、どんな人物だったのだろう。伝教大師とも呼ばれる最澄と対比すると、分かりやすい。二人は同時期に遣唐使として中国へ渡るが、当時の最澄は天皇の帰依篤い貴賓待遇、空海は無名の自費留学生にすぎなかった。だが、中国での密教修行の差が二人の立ち位置を逆転させていく。(全3話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分48秒
収録日:2020年8月20日
追加日:2021年3月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●「遣唐使」として同じ船団で中国に渡った最澄と空海


―― 続いての「日本仏教の名僧・名著」では、空海を取り上げます。空海も名前を聞く機会が非常に多い高僧かと思いますが、どんな方だったのでしょうか。


賴住  空海は最澄と同時代人で、しかも非常に深い交流がございました。もともと彼らはどちらも遣唐使の一員として、同じ船団で唐に渡っています。

―― 遣唐使ですね。

賴住 最澄のほうは非常に恵まれた立場で、天皇からバックアップを受け、自分専用の通訳もつけて、短期間行っています。空海のほうは当時は一介の無名の僧侶だったため、最澄とはかなり違う立場で留学しています。留学中は関係はなかったようですが、帰ってきてから二人の関係ができていきました。

 二人は乗った船も違っていたようです。空海は、中国でその当時の「真言密教の最高峰」と呼ばれていた青龍寺の恵果阿闍梨に学び、免許皆伝のようなものを受けました。

 一種のイニシエーションとして最高のもので、「灌頂(かんじょう)」とよばれています。空海はその灌頂を受けて、日本に戻りました。

 最澄のほうは天台宗を勉強しに中国に行きましたが、実際に行ってみると中国では真言密教のほうが盛んでした。そのため、自分が日本に仏教を広めていくためには、天台宗のみならず、真言密教も勉強しなければいけないことを、最澄は非常に強く感じます。ただ、中国での留学期間が短い期間しかなかったので、自分としてはまだまだ勉強したいという思いを持ったまま、日本に帰ってきてしまったのです。

 その後から、空海が最高の灌頂を受けて日本に戻ってきました。そこで、最澄のほうが空海に密教を教えてほしいと頼みます。自分はある程度は勉強したのだが、まだ心ゆくまで勉強ができていないので、教えてほしいと頼み、いろいろなお経を借りたり、文通をしたりしました。


●そもそも「密教」とは何で、なぜ優れているのか


賴住 当時やりとりした手紙が残っていて面白いのですが、二人の交流は続きます。しかし結局、密教の位置づけについて二人はまったく違う立場です。

―― なるほど。先生、密教という言葉はよく聞きますが、何をもって密教ということになるのでしょうか。

賴住 普通、仏教では釈迦牟尼仏を中心にしていますが、密教の場合、釈迦牟尼仏もありながら中心にしている仏は大日如来です。しかも、釈...

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