空海の真髄
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空海が主著『秘蔵宝鑰』で示した密教的世界観とは?
空海の真髄(2)主著『秘蔵宝鑰』と密教の世界観
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『秘蔵宝鑰』は、『秘密曼荼羅十住心論(十住心論)』を淳和天皇の勅命により簡潔かつ印象的に説いた空海の主著である。秘密の蔵の宝の鍵を意味する「秘蔵宝鑰」では、密教と真言の世界に入り理解するため、冒頭に詩も添えられている。十住心は、人間精神の成長の段階であり、密教の世界観が込められているが、そこには空海の政治性も感じられるという。どういうことなのか。(全7話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(TV編集長)
時間:10分18秒
収録日:2024年8月26日
追加日:2024年11月9日
≪全文≫

●勅命により密教的世界観を平易に記した『秘蔵宝鑰』


鎌田 さて、そういう中で、空海の主著とされるのが『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』です。視聴されている皆さまにもっとも手に入りやすいのは、角川ソフィア文庫の「ビギナーズ日本の思想シリーズ」の中のものです。

 空海については、加藤精一氏が口語訳付きでまとめたものが数冊あります。その中に『三教指帰』の巻、『秘蔵宝鑰』の巻、『弁顕密二教論』、「声字実相義」(しょうじじっそうぎ)、「吽字義」(うんじぎ)、「即身成仏義」(そくしんじょうぶつぎ)などなどの主著が入っています。(※『三教指帰』と『秘蔵宝鑰』は加藤精一氏の父の加藤純隆氏が以前に口語訳していたものを、加藤精一氏がさらに読みやすく口語訳したもの)

 口語訳でわりと分かりやすく、また廉価で手に入りやすい形で出版されているので。今回はそれらをもとにしながら話を進めていきたいと思います。

―― はい。

鎌田 『秘蔵宝鑰』は、空海が59歳の頃、西暦830(天長7)年頃に成立したのではないかと(いわれています)。

 淳和天皇(桓武天皇、平城天皇、嵯峨天皇、淳和天皇と続いてきた平安京の4代目の天皇)から、「密教の世界観を、分かるように説いたものを献上せよ」という勅命が下ったわけです。それに対して、空海は本当に力を込め、自分自身が持てる最高の知識・認識を詰め込んだ『秘密曼荼羅十住心論(十住心論)』というかなり分厚い書を書き上げて、提出します。

 ところが、これは密教の真髄を書いた、本当に高度な哲学書・宗教書でしたから、よく分からなかったわけです。

―― もらったほうも困ってしまうと。

鎌田 天皇も困ってしまう。

―― そうですね。

鎌田 こんなものを噛み砕いて読める人など、空海以外に一人もいないのです。だから、これをもらってよく分からなかった天皇は、「もう少し分かりやすく、短くコンパクトにまとめてくれ」というふうにして返してきた。

 そこで、それをベースにして、骨格は『秘密曼荼羅十住心論』なのですが、その核心部分の冒頭に詩を載せていく。

―― ここは詩なのですね。

鎌田 (それぞれの)冒頭に詩を載せて淳和天皇に再度、書き直したものを提出するわけです。それが、『秘蔵宝鑰』というタイトルになりました。

 以前の著作は『秘密曼...

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