宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
銀河鉄道の旅をする少年ジョバンニの孤独が意味するもの
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(2)ジョバンニの孤独
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『銀河鉄道の夜』の深い魅力は、少年ジョバンニの孤独な魂の旅にある。それは、ただの独りぼっちではなく、ばらばらにちぎられた孤独である。宮沢賢治は独りであることにどのような意味を託したのだろうか。今回の講義では「ジョバンニの孤独」が表現された箇所にスポットをあてて解説する。(全6話中第2話:2022年7月28日開催ウェビナー〈宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分18秒
収録日:2022年7月28日
追加日:2023年3月13日
≪全文≫

●胸がつめたくなる…「ラッコの上着」という悪口に対する表現の切なさ


―― それでは2回目として一つ目のテーマは「ジョバンニの孤独」です。前回のあらすじにもいろいろなシーンが出てきましたが、いくつか見ていきたいと思います。

 最初のところが家のシーンです。お母さんと、友達が悪口を言うんだよという話をしているのは、ここになります。

鎌田 「ラッコの上着」とかね。

―― そうですね。「ラッコの上着」という悪口を言う、という話ですね。

 次のシーンですが、先ほどの牛乳屋から帰るところで友達の一群に会った。ここのところで「烏瓜ながしに行くの」と訊いてみたら、返す言葉で「お父さんから、ラッコの上着が来るよ」と馬鹿にされる。最後もそれで「なんだい、ザネリ」とジョバンニが叫び返す。最後の(あんなことを言うのはザネリがばかなからだ)というメッセージも、子どもらしい孤独感が深く描かれたシーンになります。

鎌田 ここで見逃せないのは、「ぱっと胸がつめたくなり、そこらじゅうきいんと鳴るように思いました」というあたりの宮沢賢治の表現の切なさが、実にリアルに迫るところです。そのように、聞いた瞬間に自分のこころの中が凍りついてしまうような感覚が、実にビビッドに、切なく表現されていますね。

―― そうですね。誰しもの人生でおそらく何回かはあったかもしれない、こういう経験を思い起こさせるものですね。

鎌田 それは、深い傷にもなりますよね。


●どうして僕はこんなにかなしいのだろう…孤独を見つめるジョバンニの泪


―― 次の孤独のシーン。ここをゆっくりと見てまいりたいと思うのですが、先ほどのあらすじでいうと、「鳥捕り」の話が終わって、女の子と弟と青年が乗ってきた後になります。カムパネルラと女の子が楽しげにいろいろ話をしているシーンですね。

鎌田 だんだん独りぼっち感が高まってくるところですね。

―― 女の子のほうは、さすがに女の子なのでジョバンニに気を遣って、「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと」などと言って話しかけるのですが、ジョバンニはだまって口をむすんで、そらを見あげている。話もしないわけです。それで、女の子は小さくほっと息...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一