宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む
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銀河鉄道の旅をする少年ジョバンニの孤独が意味するもの
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(2)ジョバンニの孤独
鎌田東二(京都大学名誉教授)
『銀河鉄道の夜』の深い魅力は、少年ジョバンニの孤独な魂の旅にある。それは、ただの独りぼっちではなく、ばらばらにちぎられた孤独である。宮沢賢治は独りであることにどのような意味を託したのだろうか。今回の講義では「ジョバンニの孤独」が表現された箇所にスポットをあてて解説する。(全6話中第2話:2022年7月28日開催ウェビナー〈宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分18秒
収録日:2022年7月28日
追加日:2023年3月13日
≪全文≫

●胸がつめたくなる…「ラッコの上着」という悪口に対する表現の切なさ


―― それでは2回目として一つ目のテーマは「ジョバンニの孤独」です。前回のあらすじにもいろいろなシーンが出てきましたが、いくつか見ていきたいと思います。

 最初のところが家のシーンです。お母さんと、友達が悪口を言うんだよという話をしているのは、ここになります。

鎌田 「ラッコの上着」とかね。

―― そうですね。「ラッコの上着」という悪口を言う、という話ですね。

 次のシーンですが、先ほどの牛乳屋から帰るところで友達の一群に会った。ここのところで「烏瓜ながしに行くの」と訊いてみたら、返す言葉で「お父さんから、ラッコの上着が来るよ」と馬鹿にされる。最後もそれで「なんだい、ザネリ」とジョバンニが叫び返す。最後の(あんなことを言うのはザネリがばかなからだ)というメッセージも、子どもらしい孤独感が深く描かれたシーンになります。

鎌田 ここで見逃せないのは、「ぱっと胸がつめたくなり、そこらじゅうきいんと鳴るように思いました」というあたりの宮沢賢治の表現の切なさが、実にリアルに迫るところです。そのように、聞いた瞬間に自分のこころの中が凍りついてしまうような感覚が、実にビビッドに、切なく表現されていますね。

―― そうですね。誰しもの人生でおそらく何回かはあったかもしれない、こういう経験を思い起こさせるものですね。

鎌田 それは、深い傷にもなりますよね。


●どうして僕はこんなにかなしいのだろう…孤独を見つめるジョバンニの泪


―― 次の孤独のシーン。ここをゆっくりと見てまいりたいと思うのですが、先ほどのあらすじでいうと、「鳥捕り」の話が終わって、女の子と弟と青年が乗ってきた後になります。カムパネルラと女の子が楽しげにいろいろ話をしているシーンですね。

鎌田 だんだん独りぼっち感が高まってくるところですね。

―― 女の子のほうは、さすがに女の子なのでジョバンニに気を遣って、「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと」などと言って話しかけるのですが、ジョバンニはだまって口をむすんで、そらを見あげている。話もしないわけです。それで、女の子は小さくほっと息...

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