●世界の危機の中、日本で起こっているのは慢性デフレと急性インフレ
引き続いて、世界の危機、日本の危機ということでお話をいたします。
これは前回のポリクライシスを考えるときの具体例として、何を見ていったらいいのかということを、世界と日本で考えたいということです。
世界の危機は、マーティン・ウルフの説では、例えばわれわれはパンデミックを経験しました。それから、戦争、エネルギー危機を経験しました。また、世界中で金利が高騰しました。インフレーションが起こりました。さらに気候変動もあります。そこまでマーティン・ウルフは言っているわけですが、サイバーウォー、つまりサイバー危機も加えたほうがいいというのは私の説ですが、それほどここに関しては意見の違いがあるわけではありません。
私が述べたものは、認知空間ということを強調していますが、認知空間を加えれば物理空間で起こる危機のどのような領域があるのかというのは、それほど意見が違うわけではないということです。
日本の危機というのは、世界の危機にプラスして、こんなことが起こるでしょうということです。
財政破綻で金利が急騰するのかについては、財政破綻が現に起こっているという人もいるし、それは大丈夫、安全という人もいるし、意見は分かれます。しかし、日銀は出口を非常に慎重に見つけようとしています。何を警戒しているのかというと、金利の急騰です。
日本で起こっている現象は、慢性デフレと急性インフレです。急性インフレというのは、ウクライナ危機、あるいは海外の金利の上昇によって為替レートが変わります。為替レートが変わってくると輸入インフレが起こります。そして同時にサプライチェーンが分断されると、その部分がまた値段が上がる、エッセンシャルワーカーがいない、というようなことでインフレが起こります。
このとき、慢性デフレと急性インフレが同時に起こっているとすると、政策を打つときに、一体どちらを向いているのか分かりません。物価が上がるのを防ぐために、政府はいろいろと手を打ちますが、物価を上げたいというのが慢性デフレの処方箋です。ですから、2つ両方を一遍にやっているので、国民としては非常に分かりにくいということです。
ただ、慢性デフレは脱却できるの...