深刻化する「複合危機」を分析する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
世界の危機は3つの空間で起こる…重要な「認知空間」とは
深刻化する「複合危機」を分析する(1)「Polycrisis」とは何か
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
「Polycrisis(ポリクライシス)」とは複合危機のことである。世界は今、環境、地政学、社会、テクノロジーなどのリスクが相互に重なり合う複数の危機に直面しているが、さらにこれらの危機は3つの空間で起こっている。地政学の危機や気候変動などは物理空間、オンラインの取引や仮想通貨などはサイバー空間でそれぞれ起こっているが、いずれもそれだけではなく、そこにもう1つ重要な空間として認知空間を挙げる曽根氏。どういうことなのか。今回の講義でポリクライシスについて理解を深めたい。(全2話中第1話)
時間:9分49秒
収録日:2023年12月21日
追加日:2024年2月11日
≪全文≫

●ポリクライシス(複合危機)――今後、複数の危機が相互に重なり合う


 これからポリクライシス(polycrisis)というお話をいたします。

 ポリクライシスとは何かというと、複合危機とか多重危機とかに翻訳されておりますが、これは最近使われている言葉です。特にワールド・エコノミック・フォーラム(WEF:世界経済フォーラム)が使ったことで知られるようになりましたが、その前の2022年頃から使われるようになりましたけれど、まだ一般的ではありませんでした。

 ポリクライシス、複合的な危機、多重危機というのは一体どういうものかということを、これからお話をしていきたいと思います。

 これは、ワールド・エコノミック・フォーラムがグローバルリスクとして、どのようなことが起こるのかということを図にしたものです。1から10まであり、今後2年間の場合と、それから今後10年間の場合で、どのような危機が起こるのか。複数の危機が起こるという意味でいうとポリクライシスです。

 この場合のリスクというのは、環境、地政学、社会、テクノロジーで、それぞれの危機があります。これが相互に関連しているというのが複合危機、ポリクライシスです。

 通常、われわれは危機を考えるときに、国際的な危機、戦争であるとか、あるいは紛争、その他、経済危機も含めて国内政治上の危機、国内経済上の危機、あるいは社会の危機など、危機の分類としては通常の分類方法があるのですが、それ以外にも危機というのは、例えば人口動態=デモグラフィーで起こるとか、クライメイトチェンジ=気候変動、あるいは技術の危機です。

 これに加えて、マーティン・ウルフは、東、つまりアジア太平洋地域が大きく伸びてくることによる変化、それからグローバライゼーションが止まる、あるいは反グローバリゼーションが出てくるというような危機、このような危機を述べています。

 ポリクライシスの提唱者の1人であるアダム・トゥーズが出している図がありますが、これはまさしく複合的にいろいろな危機を示しています。

 例えばロシア、ウクライナ問題の戦争から核のリスクがあり、それだ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治