●ポリクライシス(複合危機)――今後、複数の危機が相互に重なり合う
これからポリクライシス(polycrisis)というお話をいたします。
ポリクライシスとは何かというと、複合危機とか多重危機とかに翻訳されておりますが、これは最近使われている言葉です。特にワールド・エコノミック・フォーラム(WEF:世界経済フォーラム)が使ったことで知られるようになりましたが、その前の2022年頃から使われるようになりましたけれど、まだ一般的ではありませんでした。
ポリクライシス、複合的な危機、多重危機というのは一体どういうものかということを、これからお話をしていきたいと思います。
これは、ワールド・エコノミック・フォーラムがグローバルリスクとして、どのようなことが起こるのかということを図にしたものです。1から10まであり、今後2年間の場合と、それから今後10年間の場合で、どのような危機が起こるのか。複数の危機が起こるという意味でいうとポリクライシスです。
この場合のリスクというのは、環境、地政学、社会、テクノロジーで、それぞれの危機があります。これが相互に関連しているというのが複合危機、ポリクライシスです。
通常、われわれは危機を考えるときに、国際的な危機、戦争であるとか、あるいは紛争、その他、経済危機も含めて国内政治上の危機、国内経済上の危機、あるいは社会の危機など、危機の分類としては通常の分類方法があるのですが、それ以外にも危機というのは、例えば人口動態=デモグラフィーで起こるとか、クライメイトチェンジ=気候変動、あるいは技術の危機です。
これに加えて、マーティン・ウルフは、東、つまりアジア太平洋地域が大きく伸びてくることによる変化、それからグローバライゼーションが止まる、あるいは反グローバリゼーションが出てくるというような危機、このような危機を述べています。
ポリクライシスの提唱者の1人であるアダム・トゥーズが出している図がありますが、これはまさしく複合的にいろいろな危機を示しています。
例えばロシア、ウクライナ問題の戦争から核のリスクがあり、それだ...