ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イランの外交的メッセージが示す意味と世界への影響
ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(4)核保有への野心と外交的メッセージ
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
沈黙から一歩踏み出したイランにおいて、新大統領が最優先課題とするのはイスラエル関係における「沈黙の続行」だろうと思しい。また、核保有への野心を捨てないイランだが、沈黙の影に隠れているのは最高指導者ハメネイ師で、西側において彼の外交的メッセージ、つまり駆け引きに応じるのは誰かということが、今後の世界の方向を示していくだろう。(全4話中第4話)
時間:14分49秒
収録日:2024年8月7日
追加日:2024年10月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●イスラエルのナタンツへの反撃が意味したもの


 皆さん、こんにちは。

 先日は、これまでのイランとイスラエルにおける両国間の直接の応酬についてお話ししました。特にイラン側においては、イスラエルに対する直接攻撃や直接的なブラフを慎重に避けてきたのが、その敷居を越えたのではないか、あるいは敷居ギリギリのところにいるのではないかということでした。

 そのようなイランのイスラエル本土に対する攻撃に対して、イスラエルのほうはイラン中部のナタンツという核開発施設と目される地域を攻撃しました。公には核の「研究施設」と語られている地域を防衛しているレーダーに対してミサイル攻撃を仕掛け、成功するという形で報復したわけです。

 これは、なかなか意味深いことで、イスラエルはその意味について語っておらず、そもそも攻撃したという事実を認めず、何もコメントしていません。しかし、これはイスラエルからすると、イランのミサイル防衛システムというものが、いとも容易に突破できるものであることを間接的に見せたということです。

 つまり、核施設そのものを攻撃するというイラン・イスラエル両者の直接的な対決、確実に戦争を招くような事態にすぐエスカレートするのではなく、その前段として、イランに対する警告を与えた。また、ハーニヤ代表を、いともたやすくピンポイントで暗殺する力を見せた。すなわちイランの防空システムを突破し、そうした行為をピンポイントで行う能力、さらにナタンツの防衛システムを壊す能力を見せつけたわけです。

 これらが何を意味しているか簡単にいうと、イスラエルにとってハメネイ最高指導者の居場所や居住地点に対する攻撃はいともたやすいことだということです。そのような攻撃ができると匂わせ、示唆し、あるいはブラフとして示した。このことは、イランにとって非常に大きな衝撃だったと思われます。

 したがって、イスラエルの与えたメッセージは、非常に確実で誤解しようのないものです。イランの次の行為やそれに対する報復行為如何によっては、イスラエルも報復し、エスカレートするということ。エスカレートというのは、今回のナタンツやテヘランのハーニヤに対する攻撃よりも、さらにエスカレートするようなものになるということを示しているわけです。ですからイランとしては、非常に慎重なものにならざるを得ない。

 したがっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(2)前提が崩れた日本的雇用慣行
日本人全員ではない…日本的雇用慣行のターゲットは誰?
宮本弘曉
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子