ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「戦略的な人間」ハメネイ師とネタニヤフ首相の思考と行動
ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(2)「傲慢と臆病」が生む戦略
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
核合意破棄以降のイランの国民生活は苦しく、欧米による制裁を解除するためには、多くの犠牲を払う必要がある。イランの最高指導者が、この苦境脱出のためにどうするかを知るには、その思考法を知らねばならない。一つには古代ローマの歴史家トログスが「傲慢と臆病」と書いた王の知恵による戦略である。(全4話中第2話)
時間:9分57秒
収録日:2024年8月7日
追加日:2024年9月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●イラン人の生活とイラン政治の苦境


 皆さん、こんにちは。

 今回、新たに選ばれたイランの大統領ペゼシュキアン氏は、イランの国民生活の改善・改良、ひいてはイラン核合意の復活などを通したアメリカあるいはEU諸国との通商貿易関係の復活などを国民に期待されていました。そのことが選挙の勝利の要因の一つだったということについて、前回、お話しいたしました。

 イラン人の生活は大変苦しいものがあります。イランの通貨はリアルといいますが、リアルの価値は今年(2024年)の7月初めには、2015年頃の約19分の1まで下落しています。2015年は、前回お話ししたイランと西側が核合意として、ウイーン最終合意を結んだ年です。イラン通貨の貨幣価値は国際的に大変下がっているということです。

 これをなんとかして安定させ、年平均40パーセント前後まで跳ね上がった物価の上昇率も下げることが(イランでは)急務になっています。リアルを安定させ、年平均40パーセントという大変な高率にまで上がった物価上昇率を下げていく。このことが、新大統領に国民が期待した大きな政治課題ではないかと思われるのです。

 そのためには何が必要かというと、申すまでもなくイランの主要産業である石油の輸出を再開することによって、貿易を正常化し、外貨を獲得することが欠かせないわけです。しかし、それを実現するためには、国会で多数派を占めている保守強硬派(が問題になります)。

 今回の選挙により、大統領と国会のマジョリティとの間にねじれが生じました。国会の多数としては相変わらず保守強硬派が残っていて、しばしばその後ろ盾になるのがハメネイ最高指導者ということになります。この両者を説得したり、この両者から支持ないしアンタント(黙認)を取り付けたりしていくのは、言葉で考えるほど簡単ではないというのが、イラン政治の難しいところです。

 しかし、ハメネイ師からするならば、イラン・イスラム革命の信奉者であるレバノンのイスラム教シーア派組織のヒズボラ、あるいはイエメンの反政府勢力のホーシー派はもとより、スンナ派であるパレスチナ自治区ガザのハマス、さらにシリアの民兵組織といった人々までを犠牲にする。

 彼らに犠牲を肩代わりさせるような露骨な形で、抵抗戦線を踏み台にして、イランが欧米に譲歩する。そして制裁解除を図る。そういうことは、政治的な選択としては...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治