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ぺゼシュキアン新大統領誕生とイラン最高指導者の持つ意味

ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(1)新大統領誕生の背景とその意味

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
2024年8月、イランにぺゼシュキアン新大統領が誕生した。改革派であり、前評判の高くなかった氏の当選は、最高指導者ハメネイ師の意向によるものとの見方が一つ。また、新大統領の政策は核合意の再開に向けたもので、EU等の西側諸国との貿易通商再開により国民生活の安定と改善につながると期待されている。(全4話中第1話)
時間:10:34
収録日:2024/08/07
追加日:2024/09/20
カテゴリー:
≪全文≫

●ペゼシュキアン新大統領の困難な船出


 皆さん、こんにちは。

 ご承知のように、(2024年7月)イランにおいてペゼシュキアン新大統領が誕生しました。この大統領就任式に出席するためにテヘランに滞在していたハマスの指導者ハニーヤ氏が、おそらくはイスラエルとおぼしき手によって暗殺されるという事態が生じ、イスラエルとイランの間に緊張状態が醸成されています。

 こうしたことを理解するために、まずは今回のイラン大統領選挙の模様、あるいはなぜイランにおいて改革派のペゼシュキアン氏が当選したのかという情勢について少しお話しして、現下の中東情勢の分析の一端としたいと考えるわけです。

 ペゼシュキアン氏は、もともと保健大臣。21世紀初頭にイラン大統領を務めた対話派のハータミー氏のもとで保健大臣を務めた人物で、もともと医学者であり、大変穏健かつバランスの取れた人物とされていました。

 しかし、今回の選挙で彼が当選すると予測した人はむしろ少数でした。しかしながら、そもそも彼が立候補を許されたのは、ハメネイ師がこの人物に当選の可能性があるものと考えた。すなわち、国民の半数を占める反体制派、あるいは「反ハメネイ」とも呼ばれる潜在的なイスラム政治体制に対して不満を抱いている勢力に対して、彼らを何らかの形で抱え込まないと、今後のイスラム政治体制とハメネイ師自身の政治生命というものが揺らぐことを危惧したからです。

 イランの大統領選挙では、このようにときどき穏健派が大統領になります。ハータミー氏も然り、あるいはローハニー氏も然りで、そのときどきの国民の間における不満を(やわらげるのが)国内における大統領の穏健な政策です。特に、対外的にアメリカなどをはじめとした西側諸国との間の貿易通商関係の再開に備えたような新しいアプローチを見せることによって、国民の生活にも変化が起きるのではないかと思わせる。そうした政策を取ることによって、ハータミー氏は左右、すなわち穏健と保守のバランスを取るような形で、自らの最高指導者としての生命を維持してきたという経過があります。


●最高指導者の持つ意味


 このペゼシュキアン氏は、第一にハメネイ最高指導者を基本的に支持する人間であるということを選挙中から隠しておりません。それから第二に、彼の改革は根本的な体制の変革につながるような、極端で急進的な改革をスロ...
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