ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ぺゼシュキアン新大統領誕生とイラン最高指導者の持つ意味
ペゼシュキアン大統領とイラン・イスラエル(1)新大統領誕生の背景とその意味
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2024年8月、イランにぺゼシュキアン新大統領が誕生した。改革派であり、前評判の高くなかった氏の当選は、最高指導者ハメネイ師の意向によるものとの見方が一つ。また、新大統領の政策は核合意の再開に向けたもので、EU等の西側諸国との貿易通商再開により国民生活の安定と改善につながると期待されている。(全4話中第1話)
時間:10分34秒
収録日:2024年8月7日
追加日:2024年9月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●ペゼシュキアン新大統領の困難な船出


 皆さん、こんにちは。

 ご承知のように、(2024年7月)イランにおいてペゼシュキアン新大統領が誕生しました。この大統領就任式に出席するためにテヘランに滞在していたハマスの指導者ハニーヤ氏が、おそらくはイスラエルとおぼしき手によって暗殺されるという事態が生じ、イスラエルとイランの間に緊張状態が醸成されています。

 こうしたことを理解するために、まずは今回のイラン大統領選挙の模様、あるいはなぜイランにおいて改革派のペゼシュキアン氏が当選したのかという情勢について少しお話しして、現下の中東情勢の分析の一端としたいと考えるわけです。

 ペゼシュキアン氏は、もともと保健大臣。21世紀初頭にイラン大統領を務めた対話派のハータミー氏のもとで保健大臣を務めた人物で、もともと医学者であり、大変穏健かつバランスの取れた人物とされていました。

 しかし、今回の選挙で彼が当選すると予測した人はむしろ少数でした。しかしながら、そもそも彼が立候補を許されたのは、ハメネイ師がこの人物に当選の可能性があるものと考えた。すなわち、国民の半数を占める反体制派、あるいは「反ハメネイ」とも呼ばれる潜在的なイスラム政治体制に対して不満を抱いている勢力に対して、彼らを何らかの形で抱え込まないと、今後のイスラム政治体制とハメネイ師自身の政治生命というものが揺らぐことを危惧したからです。

 イランの大統領選挙では、このようにときどき穏健派が大統領になります。ハータミー氏も然り、あるいはローハニー氏も然りで、そのときどきの国民の間における不満を(やわらげるのが)国内における大統領の穏健な政策です。特に、対外的にアメリカなどをはじめとした西側諸国との間の貿易通商関係の再開に備えたような新しいアプローチを見せることによって、国民の生活にも変化が起きるのではないかと思わせる。そうした政策を取ることによって、ハータミー氏は左右、すなわち穏健と保守のバランスを取るような形で、自らの最高指導者としての生命を維持してきたという経過があります。


●最高指導者の持つ意味


 このペゼシュキアン氏は、第一にハメネイ最高指導者を基本的に支持する人間であるということを選挙中から隠しておりません。それから第二に、彼の改革は根本的な体制の変革につながるような、極端で急進的な改革をスロ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫