●「力と正義」が噛み合わない中で、いかに平和を実現するか
―― ということで、今大きな構図といいますか、なぜ戦争が(なくならないのか)というところなのですけれど、これは、基本的には国レベルの話、世界レベルの話なので、こういう話がガーンと来ますと、では一人ひとりの人間に何ができるのかという課題になってくると思うのです。そこで先生がご提唱されているのが、「人間の安全保障」というお話ですね。
小原 はい。
―― 今回の講義でございますけれど、こういう大きなところを見た上で、一人ひとりとしてどうやっていけるのかということを最後考えていくということになります。いよいよそのパートに少しずつ入っていくというところになります。
小原 これは、私の問題意識でもあるのですが、非常に難しいことです。今の戦争の流れをどうやって食い止めるのか。食い止めないと、下手をするとわれわれが被害者になる可能性があるわけです。
そのために2つの方法があるわけです。今(第2話で)いったように、暴力というものを全否定するわけではなくて、やはり暴力が起こり得るという中で、その暴力からどうやって皆さんを守るのかという、まさに「なぜ国家ができたのか」と同じなのです。
そこを考え出すと、どうしても先ほど(第2話で)いった抑止力、自衛権、反撃能力と、今いろいろな議論がされていますけれど、そうした国家レベルでの安全保障の議論がどうしても必要になってきます。これは古代ギリシャからリアリストがずっと一貫していってきたことです。
同時に、それとは別途に、力だけではない部分です。先ほど(第2話で)規範の話をしました。道義と道徳、あるいは倫理、あるいは法、ルールです。こうしたものをしっかり作っていく。一貫して国際社会では「法の支配に基づく国際秩序」ということをいっているわけです。この法の支配をどうやって広げていくかです。
もちろん前提には「力」が必要です。よく「力か正義か」ということをいわれます。力こそ正義なのだ、力あるものがやることがすなわち正義なのだと、力を持った人たちや国はそういうでしょう。力がなければいくら正義を叫んでも、「正義こそ力なのだ」といって、論理的に言っていることは非常に正しく、そうあるべきなのだけれど、実際の「ある」との間には、非常に大き...